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今回高圧選択弁を廃止して、セグメントをハウジングと一体に鋳造し、専用加工機による加工によるコスト低減を計画した。

シール背面の高圧油導入を取りやめ、V型シールの背中合わせ構造として直接各サイドの作動油圧をリップ上に掛けることで自封性を実現した。またロータのぶれにVシールのリップが充分追従する寸法とした。

本構造はテストの結果内部漏れも少なく良好な結果を得た。

2] リングシール

従来凹型断面の背面に作動油の高圧側圧力を自動選択して掛けた自封式リングシールを採用していた。

背面油圧源はセグメント用の油圧を斜めキリ穴を複数加工し連結して導引していた。このため高圧側圧力が高いときはその圧力がリングシール全周にかかり、低圧室部にかかるリングシールは隙間からはみ出し勝手と成り、シールの角が磨耗する恐れがあった。

今回、より丈夫な断面を持つシールとして長寿命化を行うとともに、背面導引油のキリ穴加工を廃止して合理化することを目的とした下記のシール断面形状の開発を行った。

i) リングシール断面候補1

テストの結果この逆L型断面はリングシールを乗り越えて、軸受けスペースヘの内部流出は無かったものの、シール溝とシールとの隙間が幾分多いと、この隙間を伝って隣室への漏れが起こりやすいことが判明した。

ii) リングシール断面候補2

上記の候補1は軸受けスペースヘの漏れ出しが無い点を生かし、欠点を補正する断面2を考案し、試行した。充分なシメシロを持たせて溝に入れ込めば実用できる内部漏れ量となった。

iii) リングシール断面候補3

上記断面2はシメシロの管理が重要であるが、一般に高分子化合物の成型品の製作公差の幅は大きく、断面2を用いるには歩留まりが悪く、即ちコストが上がることを解決しなければならない。

若干シメシロの公差幅が大きくてもシール性能を維持できるものとして、断面3を考案した。

このシールは高さ方向のシメシロが圧縮された場合、底部斜面からの反力で作動油室側の溝とシールとの微小な隙間を押しつぶすことを狙ったものである。

テスト結果は充分満足できる内部漏洩量であった。

iv) リングシール決定断面4

下部リングシールはスラスト軸受け(ラダーキャリア)と隣接配置している。通常ロータには舵を含めた下向きの自重荷重が掛かっているので、双方に多少の摩耗があっても同量の沈下量となり、シールとロータの相対位置変動は少ないので、シールだけが当らなくなることはない。従って、下部は断面候補3を採用することにした。

上部リングシールとロータとの相対位置は、下部摩耗による沈下、高圧時のカバーや底板の膨らみ、ロータの動的上下動などの集積により、ロータとカバーの隙間の変動が下より多く、動的追従性を高めたものとして、断面候補3に背面圧を導入して使用することとした。

 

 

 

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