2.5.3 撥水性・親水性と摩擦抵抗の相関性
(1) 概要
2.5.2の結果から、接触角と摩擦抵抗の正確な評価には表面粗さを揃えた試料による測定が必要であることがわかった。本項では、表面粗さが揃っており水との接触角が異なる試験体の摩擦抵抗評価を行い、撥水性・親水性と摩擦抵抗の相関性を明らかにすることを試みた。
(2) 実験方法
表面粗さの揃ったSUSローター3本を準備し、1本には市販の自動車ガラス用撥水性コーティング剤を、もう1本には親水性コーティング剤(松下電工殿製、フレッセラR-100)を塗布した。このようにして接触角の異なる3本のローターを作製し、接触角と表面粗さを測定の上トルクを測定した。
(3) 結果と考察
表6に水との接触角及び表面粗さ測定結果を、図9にトルク測定結果を示す。また写真14には表面状態を示すが、親水性のものにクラックが見られるものの非常にフラットな面を形成していた。摩擦抵抗については、1500rpmまでは表面性状が親水性、撥水性どちらの場合でも比較のSUS面より低くなる。ところが1500rpmを越えるとの表面性状が親水性の場合には摩擦抵抗は低くなるのに対し、撥水性の場合にはむしろ高くなった。
写真15は2400rpmでの撥水性及び親水性試験体の試験状況である。親水性試験体に比べて撥水性試験体のほうが気泡が激しく沸き上がっている様子が観察された。2100rpm以上の高回転領域になると、ローターは気泡を巻き込み、塗装表面にまとわりつくようになる。親水性塗料の場合には巻き込まれた気泡は比較的素早く塗料表面から離れる。これに対して撥水性塗料の揚合には、巻き込まれた気泡は約10秒程度塗料表面にまとわり付き、大きな固まりとなって離れる傾向が見られた。撥水性塗料の摩擦抵抗上昇原因として、上記のようにキヤビテーションが発生して抵抗になっているためと考えられる。