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(3) 結果と考察

表5に水との接触角及び表面粗さ測定結果を示す。接触角は大きく上昇または減少しており、狙い通りの材料が作製できた。表面粗さは従来塗料に対し大きくなっている。シリカ固着塗料の表面状態を写真11に示すが、シリカ微粒子を固着させるためにローラーを塗装面に押し付けたため、雛状の突起が多数見られる。次にトルク測定結果を図8に示す。今回の結果では、2100rpm以上の高回転領域において親水性塗料の摩擦抵抗が減少することがわかった。一方撥水性塗料については1200〜1500rpmの領域で親水性塗料より摩擦抵抗が低くなっている。撥水性ローターを水中に沈めた際の様子を写真12に示す。塗料表面には水中に沈む際に取り込んだ微細な気泡が付着しており、これらの気泡は1500rpm程度まで回転させても付着していた。塗料表面に気泡を常時存在させることが出来れば摩擦抵抗が大きく低下するという報告があり3)、この効果によって摩擦抵抗が減少したと考えている。

しかし表面粗さと表面観察の結果が示すように、今回の試験体作製方法では表面粗さの均一な表面形成に難がある。2.4で示したように、表面粗さは摩擦抵抗に強く影響を及ぼすので接触角と摩擦抵抗の正確な評価が難しい。また今回の試験で最も摩擦抵抗の低かった親水性シリカ微粒子塗料について室温、3000rpmで40時間の耐久試験を実施したところ、シリカ微粒子が脱離し、(写真13)親水性の効果が失われた。以上のことから、表面にシリカ微粒子を固着させる方法には限界があると考えられる。

 

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写真11 シリカ微粒子固着塗料の表面

 

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図8 水との接触角の異なるシリカ微粒子を表面に固着させた塗料のトルク値

 

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写真12 撥水性シリカ微粒子を固着塗料をリグ試験機にセットし、水槽に沈めた状態(気泡が付着)

 

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写真13 40時間耐久試験後の親水性シリカ固着塗料の表面

 

 

 

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