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次に各粉末をエポキシ接着剤に混合塗布した場合には、表面固着のものより付着率が高くなる、すなわち防汚効果が低下することがわかった。これは接着剤中に混合したことにより表面に現れる粉末が減少したためと考えられる。ここで添加粉末の種類によって付着率に違いが生じている。この違いをもたらす原因として、粉末自身の防汚効果の優劣が考えられる。そこで各粉末による横転・胸肢突出率の変化を調べた。図2のように、キプリス幼生は水質汚濁状況下では急速に活動が低下し、底面上で横転した状態となり、最終的に胸肢を突き出した状態または殻を閉じた状態で死亡する(写真3、4)ので、横転・胸肢突出率を調べることによって、粉末のキプリス幼生に対する毒性を推測することができる。表2に示した結果から、粉末のキプリス幼生に対する毒性は、窒化ケイ素が他の粉末より高いことが推測される。よって、接着剤中に混合することによって表面に現れる数が少なくなっても防汚効果を発揮できると考えられる。結果として窒化ケイ素を複合した塗料は、粉末未添加の塗料に対してフジツボ付着率が1/6まで減少した(図1)。

 

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写真1 窒化ケイ素添加エポキシ樹脂未塗装部へ投入1時間後のキプリス幼生(探索行動中)

 

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写真2 窒化ケイ素添加エポキシ樹脂未塗装部へ投入24時間後のキプリス幼生(壁面に定着、変態)

 

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写真3 窒化ケイ素添加エポキシ樹脂未塗装部へ投入1時間後のキプリス幼生(殻を閉じ活動微弱)

 

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写真4 窒化ケイ素添加エポキシ樹脂未塗装部へ投入24時間後のキプリス幼生(胸殻を突き出して死亡)

 

2.3 摩擦抵抗評価装置の改良

2.3.1 概要

摩擦抵抗測定用のリグ試験装置レベルで生じるトルクは微小なものであるため、測定装置自身に起因する誤差は測定結果に大きな影響を及ぼす。そのため正確な摩擦抵抗を調べるために装置の改良を行い、測定精度の向上を図った。

 

 

 

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