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また窒化ケイ素については、水中で式(1)の反応を生じアンモニアを発生させることによる生物忌避効果を期待した。

Si3N4+6H2O-3SiO2+4NH3-(1)

細胞・組織培養用6穴ウェルプレート(コーニング製)のウェル底面に、生体に無害な接着剤(東亜合成殿製、販売:三共殿、外科用接着剤アロンアルファA「三共」)を塗布し、その上に各粉末を散布し、薬包紙を用いて押し付けることによって接着剤表面に固定した。エアスプレーで固定されていない粉末を吹き飛ばした後、海水にて2日間予備浸漬を行い接着剤溶媒を除去した。試験用生物としてはタテジマフジツボのキプリス幼生を用い、8mlの海水を注入したウェルに幼生を投入し、その行動を観察した。リファレンスとしてウェルプレートに何も塗布しないサンプル、接着剤のみで粉末のないサンプルを用意し、同様に試験を行った。更に塗料に粉末を混ぜた状態での粉末の防汚効果を検証するために、船舶外板用塗料として一般的なエポキシ樹脂を原料とした接着剤に各粉末を混合分散したサンプルを用意し試験を実施した。混合量は外掛けで10wt%とした。

 

2.2.3 結果及び考察

結果の概略を表2及び図1に示す。リファレンスの未塗装部では図2に示すような、幼生が遊泳→探索行動→幼フジツボヘの付着・変態というプロセスを正常にたどっていく様子が観察された(写真1、2)。また生体用接着剤のみ塗布した部分でも、幼フジツボの生存率は若干低下するものの未塗装部と同様の現象が観察された。一方、粉末を表面に固定させたサンプルでは、いずれの粉末でも付着率が低くなった(表2及び図1)。すなわち各粉末には生物付着抑制効果があることがわかった。

 

表2 生物付着試験の結果

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図1 セラミック粒子の種類による生物付着性の違い

 

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図2 キプリス幼生付着メカニズム

 

 

 

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