日本財団 図書館


(2) 第45回海洋環境保護委員会(MEPC45;2000年10月開催)

第45回海洋環境保護委員会(MEPC45)において、船舶からの温室効果ガスの削減に関するIMOでの技術的な検討結果が期待されていることが、同年9月にフランスのリヨンで開催されたSBSTA13(第13回科学上及び技術上の助言に関する補助機関会合)において表明されたこと、UNFCCC事務局とIMOとが密接に協力して作業を進めること、などがIMO事務局より報告された。

また、IMOが調査委託したコンサルタントからの温室効果ガスに関する最終調査レポート(MEPC45/8以下、コンサルタントレポート)が提出されたことが議長より報告された。今後のIMOにおける温室効果ガス関連議題の検討の際に、コンサルタントレポートを基礎資料として用いることとされ、各国は次回のMEPC46までに同レポートに関するコメントを提出するよう要請があった。

シップ・アンド・オーシャン財団はコンサルタントレポートとは別に研究発表を行った(MEPC45/INF27)。日本政府代表団は財団の研究内容をIMOにおける今後の検討に反映するように要請した。特にコンサルタントレポートが取り扱っていないCO2以外の温室効果ガスについては、IMO事務局大気汚染関連担当者から大きな期待が寄せられた。

以下に両者の報告数値の差異について簡単に分析する。

 

1] コンサルタントレポート(MEPC45/8)とシップ・アンド・オーシャン財団調査

(MEPC45/INF27)との調査内容比較

● 年間のCO2総排出量は、コンサルタントレポートが4.4億トンであったのに対し、財団調査では3.6億トンであった。これは使用した統計資料の違いが主な理由である。

● 船種別の割合は、タンカーでほぼ同一なのに対して、バルカー及びコンテナで大きな差違が見られた。

● 細かく見ると、コンサルタントレポートは現存する船がすべて動くと仮定し排出係数を乗じているが、財団調査では船の運航実態(航行日数)から推定している。

● 削減技術の評価項目及びその効果については大きな違いはなかった。

● CO2の将来予測については、20年後に財団調査が3%増に対してコンサルタントレポートでは38%増と大きな違いがあった。この差違は財団調査が船の更新による輸送エネルギー効率の向上効果を考慮しているのに対し、コンサルタントレポートではそのような効果は考慮していないためと考えられた。

● CO2以外の温室効果ガス(CH4、N2Oなど)の排出量の寄与は、財団調査ではCO2排出量の5%程度と推定しているが、コンサルタントレポートでは調査対象になっていない。

 

2] MEPC45における議論

コンサルタントレポートに関しては、日本国より、1]N2O、HFCsなどのCO2以外の温室効果ガスもIMOからUNFCCCへの提出文章の中に含まれるべきであること、2]減速航行などの実行上社会経済的に影響の大きい削減手法については慎重な議論がなされるべきであり、IMOにおける検討はハード技術面の削減手法を中心に行われるべきであること、3]シップ・アンド・オーシャン財団が行った調査研究などその他の研究もIMOの研究成果の中に反映されるべきであることの3点が意見として述べられた。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION