日本財団 図書館


5.2 CO2以外の削減対策に関する調査

5.2.1 CH4排出対策

2.1.2に述べたように、CH4の排出経路としては機関からの未燃焼分と原油輸送に伴う排出の二つが上げられる。

 

機関からの未燃焼分としてのCH4の排出は、低回転ディーゼル機関の場合には燃焼時間が十分に長く、排気中にメタンガスとして含まれる可能性は小さいと考えられる。一方、機関下部や掃気系に抜けてしまったブローバイガスが排気中へ排出されている可能性は大きいと考えられる。

ブローバイガス対策は、自動車機関においてはメタン以外のHCガス排出対策にもなることから、PVC(Positive crankcase Ventilation System)装置が既に全ての機関に設置されている。これは、クランクケース内の気体を絶えず吸気系の配管に引き込み、ケース内の圧力を大気圧に対して絶えず負圧に保つことでケースからの蒸散ガスの漏洩を防止するものである。舶用機関についても、同様の機構の開発によりCH4の排出を抑制することが可能と考えられる。

 

次に、原油輸送に伴うCH4排出対策については次のように考えられる。

国内原油備蓄基地では、グラウンドフレアスタック等の施設によって原油ガスを含んだイナートガスを燃焼処理している(図5.2-1参照)。同施設は陸上備蓄タンク内で発生した原油ガスを含んだイナートガスを燃焼処理するためのもので、低酸素濃度の状態にあるイナートガスとの混合気の燃焼を補助するために助燃剤としてA重油を用いている。

このような施設により大気中に排出されるCH4を燃焼させると、結果として当然CO2が発生することになるが、両者の温室効果係数の差違のため、温室効果ガスの放出量としては約70%の削減になる(下式参照)。

 

[ケースa]CH4 1トンがそのまま排出された場合

1×21=21t-CO2 (21はCH4の温室効果係数)

[ケースb]CH4 1トンを燃焼させた場合

CH4燃焼によって:

1×44/16=2.75t-CO2 (44:CO2の分子量、16:CH4の分子量)

助燃剤燃焼によって:

2.75t-CO2 (CH4と同じC量の助燃剤を使用すると想定)

合計5.5t-CO2

[ケースb]÷[ケースa]=27%(=CO2換算で約70%の排出抑制)

 

原油タンカーへの積み荷作業時に、図5.2-1の太点線に示すようなガスリターンラインを敷設し、陸上で処理する事によって大気に排出される原油ガスの処理は技術的には可能である。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION