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2.1.3 船舶からのCH4排出量のまとめ

以上の結果に基づき、1996年における世界の原油移動に伴う原油ガス排出量及びCH4排出量を算出した。原油の総移動量にはFearnleysの統計値を用い、原油種が異なると思われる地域ごとに集約し、さらに京都議定書の附属書I締結国11とそれ以外の国別に集計した(表2.1-9)。

 

表2.1-9 原油の移動総量

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1996 Energy Statistics Yearbookより作成。

 

積荷航海中には、1week当たり原油積荷体積の5%のイナートガスの放出があるものとし(2.1.2(1)参照)、そのVOC濃度は45%と仮定した(表2.1-6右端欄参照)。また、平均輸送日数は原油タンカーの平均輸送マイルなどから計算される3weekとした。

原油の揚げ荷時に全てのタンカーが原油洗浄を行うと仮定し(ビルジの発生量を抑えるため最近は原油洗浄を行うことが多い)、そのVOC濃度は15%であると仮定した(表2.1-6中欄参照)。また、1week当たり原油移動体積量の3%のイナートガスの放出があるものとした(2.1.2(2)参照)。

揚げ荷時のVOC放出量は原油入荷総体積の6%とした(2.1.2(3)参照)。

積み荷時の排出については、2.1.2(4)に述べた試算に基づき、総ガス排出量は原油入荷総体積の1.8倍、VOC排出量は0.72倍と仮定した。

なお、各VOC中に含まれるCH4の組成は産地別に設定した。

結果は表2.1-10に示すとおりで、原油輸送に伴い排出されているメタンの排出量は約138×103t-CH4/年、地球温暖化係数(GWP)21を乗じてCO2換算とすると、2.9×106t-CO2/年と見積もられた。また、機関からの排出分は37×103t-CH4で、同じく地球温暖化係数(GWP)21を乗じると、0.78×106t-CO2/年と見積もられた。そして、その合計値は175×103t-CH4/年、3.7×106t-CO2/年とされた。この値は船舶からのCO2排出量(375×106t-CO2/年)の約1.0%に当たる。

ただし、船舶の運航に伴う排出の一つとして、荷役時の排出をIMOの管轄する排出量としてカウントするべきか否かについては、今後検討の余地がある。原油輸送に伴うCH4排出量を国別でみると、温室効果ガスの削減義務のない附属書I国以外の輸送行為に伴いその72%が発生している。また、積み荷作業が陸上施設の責任で行われていることから考えると、これを陸上起因とするか、輸送機関起因とするかで、外航船による温室効果ガスの排出量の評価もその削減シナリオも異なってくる。

 

11 附属書I締結国

京都議定書において温室効果ガスの削減について目標設定、政策、措置を取ると定められた国々。

オーストラリア、オーストリア、べラルーシ(注)、ベルギー、ブルガリア(注)、カナダ、チェッコ・スロヴァキア(注)、デンマーク、欧州経済共同体、エストニア(注)、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー(注)、アイスランド、アイルランド、イタリア、日本国、ラトヴィア(注)、リトアニア(注)、ルクセンブルグ、オランダ、ニュー・ジーランド、ノールウェイ、ポーランド(注)、ポルトガル、ルーマニア(注)、ロシア連邦(注)、スペイン、スウェーデン、スイス、トルコ、ウクライナ(注)、グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国、アメリカ合衆国

注:市場経済への移行の過程にある国

 

 

 

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