1 外航船舶からのCO2排出量の推定
1.1 基本的な考え方 〜船舶カテゴリー別のCO2排出量算定モデルへの展開〜
外航船舶の航行に伴って排出されるCO2の総量は、OECD等のバンカーオイル払い出し統計量から年間燃料消費量を求め、容易に概算することが可能である(1.4.2参照)。しかしながら、例えばそのうち原油タンカーがどれだけを占めているのか、バルカーはどうなのかといった細目を統計から知ることはできない。また、外航船舶からのCO2排出量の将来予測を行い効果的な削減方策を検討する場合、将来の輸送量の伸びが荷種によって異なることが予想されるので、船種ごとにCO2排出量の現状の推定値と予測値を求める必要がある。さらに、CO2排出抑制のための技術等では、全船舶で共通して有効な方法もあると考えられる一方、特定の船型に有効な方法もあると考えられる。従って、外航船舶からのCO2排出問題に関する研究を進めるためには、船種別等のより詳細なレベルで排出量を推定することが第一段階として必要である。
1隻の船が排出するCO2量は、当然のことながら、年間の燃料油消費量から算出できる。従って全ての船舶についてこれが報告・公開されていれば、上記課題は何の問題もないが、そのような統計(特に世界中での統計)は存在していないので、何らかの推計方法を考えなければならない。
ここで「船」というものの属性を考えてみる。1隻の船に係る属性としては、
・船種(タンカー、バルカー、コンテナ船などの区分)
・船型(大きさなど)
・船齢(建造年次でも同じ)
・機関型式(サイクル、馬力など)
・船籍
・船主 など
があげられる。CO2排出量(すなわち燃料消費量)推定を簡潔に行うために重要な主たる属性は、上記の中では上の4つ(船種、船型、船齢、機関形式)である。このうち機関型式は船種・船型でおおよそ決まっていると考えられる。また、その船が建造された年次によってもほぼ決まっている(主機換装の場合でも船種・船型に左右されるであろう)。従って、船種、船型、船齢の3カテゴリーで1隻の船のCO2排出量の違いを表現できると考えられる。すなわち、同じ載荷重量の船で、同じ年次に建造されていても、原油タンカーとコンテナ船では同距離・同重量の貨物を運んだ場合に消費する燃料消費量が異なるだろう。同様に、同じ船種であっても船型や船齢によって燃料消費量が異なるであろう。