以上のことから、廃食用油をそのまま燃料として使用した場合では、NOx、スモークともに低減することができる。
廃食用油と軽油の場合のインジケータ線図と熱発生率を図5・9に示す。熱発生率に着目すると、軽油の方が着火直後の熱発生率の立ち上がりが大きく、僅かながら予混合燃焼のピークが現れている。これは、遮熱エンジンで着火遅れが大幅に短くなっているものの、軽油の方が燃料の蒸発・混合気形成が速くなされ、予混合燃焼が多くなっているためと考えられる。その後の拡散燃焼では両燃料との間に大きな差異は認められない。これは、廃食用油は軽油と同じように燃焼し、燃焼上の問題点は少ないことを示している。
以上のことから、遮熱エンジンでは廃食用油を何らかの処理、あるいは加工を施すことなしにそのまま燃料として利用でき、その場合ではスモーク、NOxの低減が可能であり、特にスモークでは約50%の大幅低減が達成可能である。
(2) 設計要素の影響
燃焼室形状・噴射ノズルなどの設計要素はエンジンの燃焼、性能を大きく左右する。ここでは設計要素として、燃焼室連絡口面積比と燃料噴射ノズルを取り上げ、性能に及ぼす影響について試験を行った。
連絡口面積比は主室に噴出する火炎の速度、到達距離に、燃料噴射ノズルの仕様は燃料の副室内での分布にそれぞれ大きな影響を及ぼす。主室、副室の形状・諸元は、連絡口面積比、燃料噴射ノズルの諸元を変えた場合でも同一である。なお、燃料噴射ノズルを変えた場合の噴射方向を図5・7に示している。