10. 事業の成果
「はじめに」で述べたように、造船・舶用市場における厳しい国際競争の中で、競争力強化のためには、企業内の情報システムの高度化を促進するとともに、企業間でやり取りされる各種情報を効率よく交換する必要がある。そこで、わが国造船および造船関連工業の発展に寄与することを目的として、船舶の建造に係る造船関係事業者間の情報交換業務の環境を整備し、主要な舶用機器およびその関連部品等の中から対象機器約50品目を選定し、これらについて電子データを用いた情報交換に係る情報表現方法の標準化を図るとともに円滑な情報交換を可能とする情報交換システムを開発する「造舶Web」開発研究が発案され、平成10年度からの3ヶ年計画にてこれまで鋭意実施してきた。その結果、本報告書の各章に記載したように本開発研究は最終年度を持ってその所期の目的を十二分に達成し得たと考えられる。
今回開発された造舶Web環境下では、統一されたルールの下、利用する全ての造船所、舶用機器メーカが技術情報交換を行うこととなり、また、その交換結果を自動的に自社システムに取り込むことが可能となることから、迅速、効率的且つ高い信頼性をもって作業を行うことが可能となる。また、各社がこれを導入することにより、造船・舶用あるいは舶用・舶用双方において、単に船舶建造における舶用機器の仕様決定プロセスが効率化されることに止まらず、このプロセスが整流化されることによる機器の設計・製造・艤装工程における手戻りの防止や正確な工程管理による生産の平準化等も期待される。
事業の実施内容については1章にまとめられているが、それによって得られた主要な成果を要約すると以下のとおりである。
まず、その名称が示すごとく造船と舶用工業の各企業間に蜘蛛の巣(Web)のように情報ネットワーク網を張り巡らし、情報(主として設計・技術情報)伝達の電子化により造船、舶用の両者が共にQCD (Quality、Cost、Delivery)の大幅な改善を図ろうという、造舶Webの目的に基づき目標設定を行い、年度毎にその作業方針を策定したうえ、参加各社への訪問、アンケートなどにより、企業間業務に関する現状各社が抱える問題点を明らかににするとともに、造舶Web特有の、我々自身が取り組むべき課題を明らかにした。
次に舶用機器に係る情報表現形式の開発においては、
1] 今後の造舶の業務改革のための業務施策を品目毎に造舶が共通の場で検討し、システム開発のニーズを提供するとともに、情報表現形式の開発として、初年度5品目、第2年度25品目、最終年度20品目、合計50品目ついて、造舶でやり取りすべき情報の標準化を行い、その品目別に設計・技術情報の表現方法を開発した。なお、派生的な品目追加など中途において対象品目を見直した結果、最終的には66品目の情報表現形式を開発した。