一方、社内データ再利用促進に向けて、以下の課題が明らかになった。
a) 造舶Webシステムと社内システムの接続
実証実験では、システムインストール段階でのシステム環境によるトラブルが多発した。その原因・問題点の所在を明らかにした上で、各社間で対応策を共有化し、トラブルを克服した。
システムの接続は各社各様になるのは当然だが、スムーズな接続実現ができるようなガイドライン作りが必要である。実証実験での事例の蓄積は接続のパターンや方法について多くの検討材料を与えるものと思われる。
b) 品目横断的な辞書見直しの必要性
標準化については、品目個別の議論では浮き彫りにならなかった問題が実証実験にて指摘されている。例えば、各舶用機器の納入情報や重量情報を個船単位で総括する際に、個々の標準項目の名称や定義の一貫性について不十分なところがあり、造舶Webを通じて受け取ったデータをもとに作業がスムーズにできないという状況が生じている。この結果を受けて、項目名称・定義・階層構造などに関して、品目横断の視点で辞書見直しを行った。
マッピング作業の簡素化についても辞書構造面からの改善要望がある。このような要望に対して、辞書構造において品目共通部分と品目固有部分の切り分けを行うことで、マッピング作業の削減を実現した。
c) システム・辞書の改正情報の適切な公開とサポート
情報の再利用促進のみならず、造舶Web全体の有用性維持・拡大に向けて、すべての参加会社が造舶Webとの接点を常に最新に保つことが必須である。システムや辞書の改正にあたり、参加会社に改正内容と対応方法が確実に伝わることが求められる。改正情報の適切な公開とともに十分なサポートが必要となろう。さらに、改正用のツール提供等も有効な施策と考える。
(3) ステップ3:機器設計における企業間ワークフローの再定義
造舶Webによる設計・技術情報の電子的交換実現は、各社における業務改革促進のみならず、情報交換タイミング見直しを通じて舶用機器設計プロセスを抜本的に革新する可能性を含んでいる。
現在の造船所・舶用機器メーカ間の設計・技術情報交換では、注文仕様書、協議図書、納入仕様書、工事図といった図書形式による一括情報交換が行われている。しかし、各図書を構成する情報をデータ項目レベルで見ると、メーカで作成・確定するタイミングや造船所で利用するタイミングが異なり、個別データ項目単位での交換が合理的であると思われる。