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(1) ステップ1:情報表現形式・交換規約に準拠した情報の電子的交換の導入

このステップは、造舶Webを企業間、特に造船所・メーカの設計部門間をつなぐ情報交換手段として導入したばかりであり、社内の関連業務とのデータ連携が未確立の段階である。ステップ1では、造舶Web導入時に必要なシステム要件整備を最低条件として、造舶Webの直接的効果、すなわち造船所・メーカ間で合意した情報表現形式と情報交換規約の利用がもたらす効果を実現することができる。

このステップにおける効果は、以下の4種類に大別できる。

1] 企業間の情報交換の効率化

造船所・舶用機器メーカの設計部門間の情報交換を電子データに置き換えることで、従来の郵便やFAXといった紙ベースの情報交換では不可欠であったコピーや印刷、配布等の作業に関わる人手や時間を省略でき、造船所・メーカ双方で業務のスピードアップとコスト削減を実現することができる。例えば、メーカが保有するカタログ等のデータベースを造船所に公開することにより、造船所の設計担当者は必要なデータを自らの手で即座に入手できるようになる。一方のメーカでは、造船所からのカタログ請求に対する受付、カタログの準備・発送といった業務を削減することができる。

2] 業務方式の統一と効率向上

従来、交換される情報の内容が相手方によって異なり、相手方に応じた業務処理が必要であったが、参加各社が造舶Webの規定する情報表現形式と交換規約を遵守するようになることで業務方式の統一ないし単純化が可能になる。例えば、プロペラの場合、従来造船所毎に計算依頼(引合仕様書)を構成する項目や書式が異なっていたが、今後各造船所は造舶Webで規定した情報表現形式に準拠した計算依頼を行うため、プロペラメーカは相手方の造船所に関わりなく統一した業務処理が可能になり、基本設計の大幅な効率アップを見込むことができる。

3] 情報の確実な交換と交換履歴の自動的確保

標準化されたデータ項目をもとに企業間で設計・技術情報を交換するため、情報交換の正確性・確実性は飛躍的に増大する。発電機エンジンや空調装置のように、膨大な仕様書項目や所掌範囲を交換する場合に大きな効果があると期待できる。

また、FAXの場合、送った資料が他の資料に紛れ込む危険性があるが、電子的交換では情報を散逸させることなく相手方に確実に伝達することができる。また、データ交換の履歴はシステムによって自動的に保管される。このような効果は、造船所・メーカ間で都度行われる技術問合せと回答に代表されるQ&Aのやりとりに威力を発揮する。さらに、蓄積したQ&Aの履歴に対して、キーワード検索ツールを適用することにより以後の再利用を促進することができる。

 

 

 

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