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考えてみると、毎日の稽古にも、そして年に何十回と参加する試合にも一期一会の心はあることに気づきました。それは、例えば試合での対戦相手との出会いです。色々な試合に何度も出場していれば同じ相手と再び対戦することはあるかも知れません。しかし、試合の状況や内容は絶対同じことはありえないのです。だから、どの試合も、一試合一試合心を込めて、魂を込めて戦わなければいけないのだと思うのです。毎日の稽古でもそうです。いつも同じ仲間との練習ですが、その一瞬一瞬、竹刀の一振り一振りは、決して同じではないのです。だから、常に心を込め、真剣に稽古をしなくてはならないのだと思います。これが剣道においての「一期一会」ではないのかと僕は考えました。そして、この言葉は茶道や剣道だけでなく、人として生きていくうえで、とても大切な事なのだと思いました。出会いを大切にするということは、相手に対して思いやりを持って接することです。だから、僕達が皆、このことを忘れずにいれば、今、大きな問題となっているいじめや暴力といった人を無惨に傷つける行為も、きっとなくなると思うのです。

僕はこれまで六年間剣道を続けてきて、毎日同じような練習の繰り返しに気持ちがダレてしまうこともありました。けれど、これからは僕なりに解釈した一期一会」の心を忘れずに、これまで指導していただいた先生、先輩方、また、これまで出会った多くの仲間、そして、これから出会う多くの人達とのそれぞれの出会いや教えを大切に、一日一日、一瞬一瞬を心を込めて過ごしていきたいと思います。

 

『剣道を通して今思うこと』

 

大分県大野郡

大野町少年剣道クラブ

中学二年生

後藤弘樹

 

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「何んで僕に剣道をさせたん。」小さいころ何度となく父にたずねていた言葉です。そんな時父は、「心も体も強い子になってほしいから。」と言っていました。僕が剣道を始めたのは、幼稚園のころなのでその言葉を理解することはできませんでした。

半ば強制的に連れられて行った道場は、正座を強いられることの苦痛と厳しい練習でした。最初に学んだことは、礼儀です。練習の始めと終りの挨拶は厳しく、最後は忙しい中練習を見守ってくれる親に向い「お父さん、お母さんに礼。ありがとうございました。」で終ります。頭の下げ方、指のつき方、心のこもっていない時はすかさず先生に怒られたものです。

小学校三年生の時、ある大会の個人戦で優勝しました。その時の感動は今でも忘れることはできません。つらかった練習も止めたいと思う気持ちも一変にふき飛びました。

「もっと強くなってやるんだ。」と思ったのはその時始めてで、「剣道をずっとやるんだ。」と心に決めたのもその時からだった気がします。

それからというもの剣道は僕にとって生活の一部となっています。

中学になり部活が始まり、ますます練習もハードになりました。部員は女子共に七名という少ない人数ですが、僕は部長として剣道部をまとめる責任があります。部員みんなが心を一つにして練習に励み試合も精一杯戦えば勝つことも夢ではないという経験もしました。

 

 

 

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