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私の道場の面手ぬぐいには「孝道」とかいてあります。小さい頃「孝道」の意味を「お父さんお母さんを大切にすること。」と教えてもらいました。でも、私は親孝行どころか、逆に、家族みんなに孝行してもらっているんじゃないかと、いつも思っていました。道場で皆勤賞をもらった時も、道場の先生が、「お母さんの皆勤賞だね。」と、おっしゃいました。本当にその通りです。どんな時でも、「奈菜行くよ。」の一言で、道場へ通っていました。あの時、もし母が「今日はどうする?行くの?」などと言っていたら私の中にも甘えがでて、皆勤賞はなかっただろうし、特に中学になってからは、勉強も部活もあって大変な中、きっと休みがちになっていたのだと思います。そして、これまでがんばったおかげで、今年の道場対抗の女子個人で優勝し、県の代表として全国大会に出場しましたが、それもなかったと思います。父や母は、「奈菜が剣道を一生懸命やっているおかげで、たくさん楽しみが増えたし、応援のしがいがあるよ。」と言ってくれました。私は、自分では気付かないうちに親孝行していたんだな。と思いました。私が小学校の頃、ある試合場での事です。私の道場の男の子が、試合場のトイレのゲタをきれいにそろえていたそうです。

それを見ていた、ある先生が、私の道場の先生に、「近藤先生の道場の生徒さんは立派ですね。」とほめて下さったそうです。その時、先生は、みんなにその話をして「先生は、とてもうれしくて、そういう子供がいるということを、ほこりに思っているよ。先生孝行だぞ。」と、おっしゃいました。その男の子も私と同じように小さい頃から、ずっと剣道を続けているのですが、なかなか試合では勝てません。

又けい古の時も先生にたおされたり、たたかれたりしていたのですが、いつも弱音をはかず、不器用でも一生懸命けい古をしていました。先生は、そんな男の子の気持ちをよく分かっていて「先生孝行だぞ。」と、おっしゃったのだと思います。私は「孝道」というのは、自分達を見ていてくれる人に恩返しをすることなんじゃないかと思います。いつも応援しはげましてくれる家族や、厳しいけい古をつけながら、人間として何が一番大切なのかという事を、剣道を通して教えて下さる先生方、剣道部のない私を理解し、私が剣道の試合で出れない時でも、私の分までがんばってくれたハンド部の先生や友達。辛い時も苦しい時も、いつもはげまし合い、仲良くしてくれた道場の友達。私にはこんなにたくさん恩返ししなくてはいけない人がいるのです。私の周りの人と今の道場に入り剣道を続けてこれた事は私の一番の宝物です。来年から高校へ進学しますが、剣道を通して学んだたくさんの事を忘れず、少しずつ恩返しをし、私のがんばってる姿を見てもらいたいと思います。

それが私の「孝道」です。

 

『父の励ましに奮起』

 

大阪府大阪市

大阪城東剣道クラブ

中学一年生

則竹勇司

 

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「剣道をやりたい」。

それは、僕が小学四年生の十一月三日に行われた全日本剣道選手権大会をテレビで父と観戦してからでした。

 

 

 

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