こんにちは、
ぼくが、剣道を習い始めたのは、小学校三年生の時、初めての見学の日、胸がドキドキしながら母につれていってもらいました。
体育館に入った時、「メーン」というするどい気合の入った声が聞こえてきて、その雰囲気に圧倒され、思わず母の背中にかくれてしまったことを覚えています。でも、みんなの動きがきびきびとしていて、とてもきれいでした。
「ぼくもあんなふうにできるのだろうか。」
不安をかかえながらも練習に見とれていました。
最初は、剣道がどんなものなのか、わかりませんでしたが、先生に聞いて見ると、剣道とは、礼に始まり礼に終わるものだと答えが返ってきました。そして、体育館に出入する人達がみんな礼をする理由が少しわかりました。ぼくは、ただ礼をするだけの日々がしばらく続きました。
それから三ヶ月ぐらいたった四月の初め、あらためて先生から、「剣道とは、技術をみがくだけでなく、礼儀を学び、心を養うものである。」ということを教わりました。その時、体育館は単にスポーツだけをする所ではなく、僕にとっては、精神を学ぶ道場なんだということに気づきました。
それから、しばらくして、先ぱいの試合を見る機会にめぐまれ、はげしい打ち合いで切りさくような気合が体育館にこだまし、気力をふりしぼって戦っている姿をぼくは、ずっと見て、もしぼくだったら、勝ったらうれしいし、負けたらくやしいと思います。すぐに顔や態度に出るだろうと思い、でも、勝った方も、負けた方も、試合が終わると、おたがいに礼をし、戦う前と同じように、何事もなかったかのように静かに礼をしました。
そして、ぼくのおばあさんが、二ヶ月間入院した時のことです。おばあさんは老人保健施設という所へ、入っていました。日曜日に自転車をこいで会いに行き、そこには、車椅子に乗っているたくさんの、おじいさんやおばあさんがいました。