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だからもっともっと努力して、大人になった時に、こまらないようにたくさん心の貯金をためておくんだね。」との母の言葉でした。

ぼくは剣道を習っていろいろな人に力強く生きていく勇気をもらいました。どんな事にも全力をつくすことの大事さを学びました。これからも、琢心館の名に恥じない、そして先生や両親にもよろこんでもらえる剣士になるように、けいこにはげみ心も体ももっともっとたくましくなりたいとおもいます。

 

『悔しさをバネに』

 

新潟県新潟市

成思館道場

小学六年生

清水里奈

 

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皆さん、誰もが「悔しい」と思った事があると思います。試合で負けた時の悔しさや、どんなにがんばってもうまくいかない時などいろいろあると思います。私が今日まで頑張ってこれたのはいつも心の支えになってくれた先生方、先輩、友達、家族がいたからだと思います。そしてもう一つ剣道を本気でがんばろうとさせてくれたことがあります。それは二つの『悔しさ』があったからです。最初の悔しさは一年生の秋、初めて遠征稽古に行った時の事です。面を付けたばかりで大きな声を出すことしかできない私に初めてお会いした先生が「元気があってとてもうまいね」と言って下さいました。道場以外の先生からほめてもらう事など当然初めてでうれしさで一杯でした。しかし周りを見わたすと生徒達は私を見てクスクス笑っていました。それも冷やかしのような笑い方でした。「どうして笑われているのだろう。おせじなのかもしれない。でもそんな笑い方しなくてもいいのに」悔しくて悔しくて涙をこらえることが精一杯でした。「君達にはもう二度と笑われない。君達以上に稽古して男の子に負けない剣士になってみせる」と心に誓いました。その悔しさが本気で剣道に取り組めた最初のきっかけです。

二つ目は日本武道館で行われる小学生の部の個人戦に出場できなくなった事です。「全国大会個人戦で男子と試合をしてみたい」その思いで一年間頑張ってきました。いえ、頑張ってこれたのだと思います。待ちに待った予選会当日、不安と自信、いままでにない緊張感でもこの試合に対する気持ちだけは誰にも負けたくはありませんでした。試合は進み準決勝、無制限の延長戦が続き気力だけで戦っているのが自分でもわかりました。決勝戦もまた延長戦となり握力がなくなっていきました。そして左手がしびれているような感覚になっていました。「ここで負けられない。負けてたまるか」と気力をふりしぼりそして胴を抜いていました。「ヤッタ!」うれしさで手のしびれなど忘れていました。しかしこの喜びはわずか二十八日間に過ぎませんでした。六月十一日、私にとって一生忘れる事のできない一日になりました。私の夢、それが現実となったと思った個人戦には女子の出場はできないと知らされたのです。「どうして?やっと手に入れたキップなのに。一年間がんばってきたのにどうしたらいいの?」悔しくて悔しくて涙が止まりませんでした。次の日もそのまた次の日も一人になると自然に涙があふれてきました。数日後、三人の先生方が道場に来られ私が出場できなくなったのは大人のミスだったと頭を下げられました。その中には私を初めてほめて下さった先生もいました。

 

 

 

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