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最初は重くて、うまく動けなかったけれど、だんだん慣れてきて楽しくなりました。面が自分でつけれるようになったらもっと楽しくなりました。先輩達は声も大きく、ふりかぶりも速くてとても強かったです。先輩の中には、私の兄がいます。私は、勉強も、剣道も兄にかないません。でも、こわかったけれど兄を見て「一生懸命」という言葉がうかび勇気がわいてきました。

松岡先生は私の剣道を、いつもほめて下さいます。私はほめられるとうれしくて、またがんばれます。初めて兄に一本とれた時は、兄に近づけてうれしかったです。私の得意技は返し胴です。兄は私と稽古する時、胴に気をつけて、稽古しているのがわかります。こんな私にも真剣に稽古をつけてくれるので、とてもうれしいです。でも最近は、兄も勉強が忙しく、相手をしてもらえないのでちょっぴりさみしいです。今度、兄と稽古ができる日までに、もっと強くなって兄をビックリさせたいです。

私には、たくさんのライバルがいます。母も、その一人です。私は、母には面をぜったいに打たせません。必ず、返し胴で決めてみせます。だから母は、本気になって面をねらってきます。私は母と稽古するのも楽しいです。母から一本取ると、松岡先生は、大げさにほめてくれるので、厳しい稽古も、楽しさにかわります。暑い日も、寒い日も、厳しい稽古に、がんばれるのは、私が剣道を「大好きだから!」だと思います。

5年生の時、私は道場連盟の女子の大会で愛知県の代表に、なることができました。ひと試合ごとに、震えるほど緊張して、お腹が痛くなったけれど、みんなが応援してくれたので、がんばることができました。決勝戦で、吉田さんという人に、みごとな小手を打たれて負けてしまいましたが、私にとっては、忘れない、とても勉強になる小手でした。

そして私は、岡山県で行われた全国大会に吉田さんと二人で出場しました。私は初めての全国大会なので、驚くことばかりでした。順番が近づくにつれて、足が震え冷や汗が出てきます。体中が、熱くなって私の試合が始まりました。私が少し動いた所を、小手を取られ得意の返し胴で取り返し「勝負!」必死でがんばったけれど、相手の小手が決まり、負けてしまいました。くやしくて、涙が止まりませんでしたが、母が「よくがんばったね」とほめてくれました。吉田さんが、一番前で見てくれて、私が一本取った時に、拍手してくれたと聞いて、とてもうれしかったです。今度は、私が吉田さんの、応援をしました。吉田さんは優勝して日本一になりました。私は自分のことの様にうれしかったです。道場のちがう二人はこの試合で友達になれました。

私は、これが兄の言う「交剣知愛から生まれた友情なのだ」とわかりました。

私は中学生になっても剣道を続け竹刀を交えてたくさんの友達を作りたいです。私を応援して下さった静岡県の羽賀先生が帰る時に「どうした時に小手を打たれたのか考えなさい。」と教えて下さったので、もっと工夫して稽古します。

心を清く体を強く鍛え、信頼される人になれる様に、先生の教えを守り正しい剣道に励みます。私には松岡先生と母と兄がついていてくれます。ライバルという仲間もいます。そして、何よりも、吉田さんという目標があります。吉田さんに打たれたあの小手を、忘れないでがんばって稽古します。

私は、「剣道が大好き」だから…。

 

 

 

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