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バハマ国籍旅客船スキャンディナビアン・サン(注46)がフロリダ州マイアミで火災事件を起こしたときの調査結果として1985年8月21同に安全委員会は、コースト・ガードに対し、次の勧告文を送っている:

M-85-59

短期国際航海に従事する船舶に乗船する旅客に対し、出港直後に避難訓練を実施し、そのとき、緊急時の訓練や初歩的な安全指導を行うことを義務付けるよう、国際海事機関にSOLAS'74の改正を提案して下さい。この安全指導では、実際の救命胴衣着用、避難、退船順路及び自動防火扉の機能、火災発生時、あるいは種々の緊急時に取るべき行動などについての説明をすることを含みます。

コースト・ガードは、SOLAS'74を1983年に改正した新条約第III章規則18がこの勧告に沿ったものであると主張した。安全委員会は、旅客が集合した場所で実際に行う訓練に代わるものとして、旅客に与える口頭あるいは文書による説明が不十分であるとの考えは変わらないと返事した。その結果として1992年7月10日に、安全勧告書M-85-59を“閉鎖--採用不可能行為”と評価した。

注46 海難報告書--バハマ国籍旅客船スカンディナビアン・サン火災事件。1984年8月20日。フロリダ州マイアミ、マイアミ港で発生。(NTSB/MAR-85/08)

 

安全委員会は、ハリハックスでQE2に乗船した旅客が、単に緊急時用の説明書に目を通すように言われただけでなく、乗組員から救命胴衣の着用方法の説明と実際に着用する訓練を受けるべきであったと考える。安全委員会は、SOLAS規則が、最初の出港地以外で乗船した旅客に対しても、乗船後直ちに、資格を持つ乗組員から分かり易く簡単な安全についての説明を受けることを義務付けるよう、改正されるべきであると考えている。

身体に障害を持つ旅客が経験した困難度は、今回の事件では重大な問題にはならなかったけれども、この人たちは、自分らに対する、緊急時にあっての異なった対策が必要であると言っている。例えば、聴覚に障害のある一旅客は、安全委員会の調査に応じ、船内放送を聞くことが出来なかったと不満を述べている。この女性が、自室内のテレビジョンで様子を調べようとしたら、船内独自の放映型式が出来ていないことが分かったのである。しかしながら、キューナード社によれば、QE2では船内テレビジョン放送系統に、この放映型式を取り入れていたとのことである。

聴覚に障害のある旅客が、生命に関わる安全上や緊急の情報を得られない状態は排除しなければならない。

 

 

 

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