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生還

本件に関係した安全委員会の質問に対する回答では、旅客が乗揚による周囲の状況について安全であること、退船の必要のないことを事件直後に、いち早く、通報されたことが明らかになっている。

翌日(8月8日)キューナード社は、船底の損傷の規模が大きいのを知って、旅客全員をニューポートの陸地に移すことを決定した。船長は、天候が良くないとの予報を聞いて、退船作業を8月8日の夕方から8月9日の早朝にかけて続けて行うことを決意した。安全委員会の質問に旅客のうちの11人が、夜間の退船は危険であると書き送ってきた。また、退船は8月9日の日出まで待つべきであったと言っている。しかし、旅客の大多数は、QE2から安全に退船したと答えている。そして、安全委員会は、夜間の退船で旅客に危険が増大したとの証拠を見い出すことができなかった。

旅客に対する短期の安全指導と訓練とに関しては、海上における人命の安全のための国際条約(SOLAS)の第III章規則第18第3.2節に規定がある。その部分は:

国際航海に従事する船舶にあっては、乗船後24時間以内に、旅客を招集すること。旅客に対し、救命胴衣の着用方法及び緊急時における行動について指導すること。最初の招集の後に小人数の旅客が乗船した場合には、新たな招集をしないで済ますことができ、この旅客には、規則で定めた、緊急避難案内板[立看板]に注意を払うように伝えることで十分である。

QE2にハリハックスで乗船した旅客は、ニュー・ヨークで最初に乗船した旅客にあった救命艇訓練に参加する利益を受けられなかった。ハリファックスからの旅客に対する緊急時に対応する簡単な訓練には、各々の客室に船室係が配った非常時についての案内書に注意することが含まれていた。非常事態は、出港すればいつでも起こり得るから、中間港で乗船した旅客も、資格を持った職員から分かり易く安全と緊急時に対応する方法との説明を受けるべきである。緊急時においての、この説明がないことで、緊急に退船する事態が、特に、深夜に発生したら、重大な結果を招く恐れがあった。安全委員会は、ハリファックスからQE2に乗船した旅客が、分かり易い安全と緊急時における説明と、その際の訓練を受けなかったことで、乗船中の緊急時に備えがなかったと考えていると結論した。

 

 

 

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