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そこには、二重底タンクの注、排水用遠隔操縦装置が並んでいた。機関士一人が、船内発電に悪影響が生じた場合に備えて、非常用発電機室に行った。損傷点検に合わせるためと船長にその内容を知ってもらうためとで、安全管理担当士官が、船内用計画書を持って船橋にやってきた。残りの航海士達が、船橋に集まり、それぞれ、船長の指示に対応できる体制を整えた。

損傷についての第一報が、機関室から上がってきた。数個所の空きタンクであった二重底が、現在は水圧による浸水で満杯になっていた。最初の損傷点検では、ファーピーク・タンク、清水タンク1個、空の燃料油タンク、燃料オーバー・フロー・タンクそれとコッハーダム(注12)など、36個の二重底のうち4個所で、外側に向かって開口しているのが判明した。3番船倉の底板が上に向かってめくり上がっているのが見つかった。応急の処置として、安全管理担当班の手で、木材の支柱が船体鋼材と船倉の内底板との間に嵌め込まれた。(損傷状況の詳細については、船体損傷の項参照のこと。)

水先人は、事件発生の件をコースト・ガードに通報するよう船長に進言し、当局と連絡をとるよう提言した。事件発生の件は、損傷の概要が把握されたのち、22時37分に通報された。通報の内容を調べたマサチューセッツ州ウッズ・ホールのコースト・ガードから、投錨して隊員が到着するまで待機せよ、との連絡が22時55分に船長に届けられた。23時32分にQE2は、ゲイ・ヘッドの西南西方約11.5海里、ロード・アイランド州ニューポートの南東方おおよそ20海里のロード・アイランド海峡に投錨し、23時48分に救命艇11号を降下して空であった燃料油オーバー・フロー・タンクに生じた破口から油の流出があったかどうか船体周囲の点検を行った。

注10 二重底タンクとは、船底外板とタンク内定板との間の水密空間のことである。

注11 舵をとった際、その効果を生じさせるのに必要な前進速力のこと。

注12 2個の区画を分離させる空間部分のこと。

 

船長は、船内放送を通して最初の情報が旅客に通知されてから45分以内に乗り揚げた事実と船体には危険がないこと、そしてコースト・ガードの要請で短くても早朝までは、錨地に留まると発表した。そして旅客には安心して寝むよう、そして朝になったら改めて説明すると告げられた。

 

コースト・ガードの対応…水先人は、コースト・ガードにQE2は船底損傷のおそれがあること乗組員が油の臭いをかいだことを報告した。QE2は、事件発生時、923,454ガロンの燃料油を積んでいた。また、損傷しているに違いない燃料油のオーバー・フロー・タンクから38,500ガロンの燃料の流出した可能性があった。ケープ・コッドのコースト・ガードの航空基地からヘリコプター一機とヴィンヤード島のメネムシャのコースト・ガード基地から多目的船艇一隻とが、状況確認のため直ちに現地に向かうよう指示された。

 

 

 

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