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水先人は、26号灯浮標で針路を伝じ、ジャイロ・コンパスで237度に定針したと証言した。同人は、ジャイロ誤差は無視できる程度のものであったと記憶している。(注6)また、同人は、“目指す灯浮標をうまく通過出来るよう。”予定針路から1-2度右方に修正して航行していた。ナビゲーターが船長の承諾を得て海図に予定進路を記入していたけれども、水先人は、自分の考えで針路を選定すると説明した。この点について同人は、“ヴィンヤード海峡の出航方法には、私独自のやりかたがある。”と証言している。同人は、灯浮標に沿って走ることを第一に考え、それとともにレーダーを観て、必要に応じて船位の確認をしていた。水先人は、ナビゲーターが作成した予定進路線を幾らかは頭に入れていたか、との調査官の質問に対し、“ナビゲーターとは話していないし、私が出航時に用いようとしていた進路と対比させて海図上の予定進路線がどんなものか調べもしていなかった。”と答えている。

注3 英版水路誌-合衆国東岸水路誌、版権クラウン・スティショナリー出版会社NP-68、第7版 第1巻、1975年5月23日発行 付録10-1991号、1991年11月30日発行

注4 合衆国沿岸水路誌、第2巻-大西洋岸:ケイプ・コッド至サンディ・フック、海岸・地理調査研究所、国営海洋資料提供所、海洋・気象局、合衆国商務省、26版 1992年発行

注5 本船の喫水は、船首32フィート4インチ船尾31フィート4インチと計算されていた。船長は、喫水の設定は自分の指示によったものであったと証言し、本船では1フィートの船首トリムのときに操船がうまくいくのだと述べている。

注6 全ての針路は、特記されているものを除き、真方位で示す。

 

進路線上に他の航行船が見られなくなったとき、船長は、速力を上げて、“24ノットばかりで走ったらどうでしょう。”と水先人に尋ねている。水先人は、当初、そのとおりにしても良いと考え、それから船長の意見に賛同し、それに従って21時24分速力を上げたと証言した。船長は、出廷したとき、その高速力で、あなたも当直航海士も怖く感じなかったのか、と尋ねられ、“そんなこと全く感じませんでした。言うなれば、その速力に慣れていますから。”と答えている。二等航海士が海図上に記入した21時36分と21時58分の船位を基にして運輸安全委員会が計算したところでは、この間の平均速力は24.6ノットになっている。船長は、予定どおりにニュー・ヨークに着くためには、平均速力を25ノットにする必要があったと述べている。予定に合わすための余力はもっていたけれど、船長は、先に行ってからあまり高速力で走りたくなかったから、出来るだけ早めに速力を上げておきたいと思っていたのである。船長は、QE2の北大西洋航行中の通常速力は、28.5ノットである、と証言している。

QE2は、ヴィンヤード海峡出航路を三分の二ばかり過ぎた地点、即ち、同海峡の西端のゲイ・ヘッドの北方3.2海里の地点に位置する“NA”灯浮標を21時44分に針路235度で通過した。

 

 

 

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