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注1 本船の航海計画作定は、担当の一等航海士(ナビゲーター)であるが、本件発生時は、同航海士は非直であった。

各船橋当直航海士は、必要に応じて、初期の予定進路を離れ、修正進路を設定して航行することができる。

注2 音響測深儀または電気式測深装置のことで、船底外板から海底までの深度を測定する。

深度は、水中に音速(秒速約1,483メートル、あるいは毎秒約4,800フィート)の信号波を海底に向け発信し、その反射波を受信することで測定される。信号波は、船底外板の装置を通して海底に向け発信され、同装置が海底からの反射波を受信する。

音響測深儀は、発、受信の経過時間を測定し、それから深度を算出する。この装置は、ファゾメーターと呼ばれることもあるが、これは一製造会社の商標名である。

 

船長は、船橋内の命令簿で、船橋当直者に対し、特に水先人の乗船中には絶えず船位を測定し、海図上に記入することを指示している。二等航海士は、レーダーを用いて航路近くの顕著な陸上物標の距離と方位とを測定し、これを海図に当たって船位を確定させるのである。船位は、速力算出に容易となる6分ごとに記入されていた。船長は、海図上のナビゲーターが設定し、船長が承認した予定進路線からある程度の変位が生じたときには、当直中の二等航海士から報告を受けていたと述べている。ナビゲーターがヴィンヤード海峡の入、出航の進路を海図上に記入したとき、合衆国沿岸水路誌(注4)と同じような内容で出版されている英国水路誌(注3)を参照している。ナビゲーターは、英国水路誌は、ヴィンヤード海峡の入、出航する船舶は、“NA”灯浮標の南東を通航することを奨めていると述べている。英国水路誌の記事で知った情報を基にナビゲーターは、英国版海図(BA)2456号に進路線を記入した。この進路線は、“NA”灯浮標付近の36フィート水深線を替わし、同灯浮標(注5)の東南東方半海里にある深さ40フィートの地点を通過するようになっていた。ナビゲーターは、10尋(60フィート)等深線から十分南側に離して進路線を設定していた。この等深線は、カッティハンク島の南方約2海里半、即ち、ソー・アンド・ピッグ礁の南方約1海里の深さ39フィートと測定された地点が存在する岩盤地帯を囲んでいた。ナビゲーターは、海図を使用する航海士達に“この危険水域”の注意を喚起するため、ソー・アンド・ピッグ礁を囲む等深線には特別の印を付けておいたと話している。

QE2では、錨地を発してから21時48分までは、海洋・気象局(NOAA)発行海図13233号ばかりでなくBA版2456号にも船位を記入し、21時48分からはBA版2890号を使用してこれに船位を記入していた。ナビゲーターによれば、合衆国海域では米版海図よりもBA版海図が好まれていた。英国水路通報(これは、いつでも容易に入手できる。)が、BA版の海図番号で通達しているからである。しかし、合衆国沿岸ではBA版よりも大縮尺のものが多いので、NOAA版も同じように使われている。

 

 

 

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