環境
環境には内部及び外部の気象、温度、視界、振動、騒音及び人が作業する場所の条件を構成するその他の要因が含まれる。時には、システムを運用することについての広い意味での政治的、経済的束縛がこの要素に含まれることもある。温度の調整は意思疎通、意思決定、管理及び調整に影響を与えるから環境の一部である。
ステップ2-事件経緯の決定
調査官が「いかにして、なぜ」という質問をする段階になると、プロセスの最初のステップで明らかにしたデータと関連づけることが必要になる。調査官は生産の体系を用いた事故因果関係についてのReason(1990)モデルを、事件の経緯を展開させる手引きとして使用できる。同様に、ReasonモデルはSHELモデルで収集した作業システムデータを更に系統立てるのを容易にし、ヒューマンパフォーマンスに関するこの作業システムデータの作用について理解を深める。事件経緯は5つの生産要素、すなわち、意思決定者、ライン管理、必要条件、生産活動及び防護のいずれかを巡る発生事象と状況に関する情報を整理して展開される。
生産要素自体は基本的に時系列で配列される。事故又はインシデントを招くことになる事象や状況は必ずしも事件現場に時間的にも場所的にも近接しているとはいえないことから、この時系列という点は重要な系統要因となっている。このデータの逐次的配列を組み立てることによって、即発的active要因対潜在的latent要因というReason(1990)の概念が導入される。
即発的要因とは事件に至った終局的な事象又は状況である。即発的要因はシステムの防護(例、警報システムの機能停止)内で直接発生するか、あるいは間接的にシステムの防護違反(例、悪い手順の使用)になる生産活動現場(すなわち、作業システムにおける人、ソフトウェア及びハードウェア要素の統合した活動)かのどちらかで発生するので、即発的要因の作用は直ちに明らかとなる。
隠れた要因は人、組織レベル双方に存在するもので、所与の作業システム内に存在する条件の中に出現することがある(モデルの必要条件要素を参照)。隠れた要因の例としては、不適正なルールや手順、不十分な訓練、過重な作業負担及び異常な就労時間によるプレッシャーなどがある。