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2.2.6.3 調査の初期段階において、調査官は原因確定に関係あるかもしれない事実を全て収集、記録するようにする。調査官は虚心になれなくなって、あらゆる可能性を考慮できなくなることに陥る拙速な結論に至る危険性を認識すべきである。この点を留意して、調査プロセスの事実認定段階自体を結論や勧告を導き出すために収集した証拠の包括的分析から切り離し、分析の有効性を担保するために構造的な方法論を取り入れることを推奨する。こうすることで、分析は見過ごしてしまったかもしれない紛失した証拠の断片あるいは別の調査の方向を明らかにするのを助けることができる。

 

2.2.6.4 調査チェックリストは調査範囲全体を留意する上で初期の段階では非常に役に立つが、考え得る調査局面を全て網羅できるとは限らないし、基本的な原因となる要因に全ての者を導くともいえない。チェックリストを使う場合、こうした限界をはっきりと理解しておくべきである。

 

2.2.6.5 初期調査段階では、事件に密接した条件や活動に焦点をあて、「即発的失敗(active failure)」とも呼ばれる一次的原因のみが特定されるのがこの段階では普通である。しかし、「潜在的失敗(latent failure)」とも呼ばれるこうした原因に内在する条件又は状況も調査しなくてはならない。

 

2.2.6.6 調査中考慮すべき要因として最近なされた変更があげられる。多くの場合、事件前に何らかの変更が行われ、それがすでに存在する他の原因となる要因と結びついて事件の引き金になる。乗組員、組織、手順、プロセス及び機器の変更を調査し、特に、管理や指示の引継ぎ、変更について知っていることが必要な者に対する情報の伝達を調査する。

 

2.2.6.7 作業サイクル及び作業に関連するストレスの影響は事件前の個々人の行動に影響を与える。個人の所為に関係している社会的及び家庭内のプレッシャーの影響(いわゆる、エラー誘発条件 error-enforcing conditions)は見逃すことができない。

 

2.2.6.8 情報はできるだけ照合する。色々な証人が行う陳述は矛盾し、補強証拠が必要となる。全ての事実を確実に明らかにするため、「誰が、何を、いつ、どこで、なぜ、どうして」など広範囲にわたる質問をしなくてはならない。

 

2.2.7 質問の実施

 

2.2.7.1 質問を始めるに当たり、質問者側の紹介、調査及び質問の目的及び質問で得た知識や資料を将来利用する可能性があることを説明しなくてはならない。調査官は法律顧問やその他第三者が質問中立ち会うことに関する国内法の規定に従わなくてはならない。

 

 

 

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