1.6 海難及び海上インシデントに寄与するヒューマンファクターを大きく定義すると、あるシステムの適正な機能あるいはある仕事の適切な遂行に悪影響を与えるような意図した若しくは意図しない行為又は不作為となる。このため、ヒューマンファクターを理解するためには機器の設計、運転者と機器との相互作用及び乗組員と管理者が準拠する手順について研究、分析することが必要になる。
1.7 海難及び海上インシデントの一因となっている特定のヒューマンファクターを明らかにするのを支援する事故調査官のためのガイダンスが非常に必要であることが認識されている。また、調査中、ヒューマンファクターに関する情報の系統的収集と分析のための手法や手順についての実際的な情報を提供することも必要である。本指針はこうした必要性に対応しようとするものである。指針には、調査官が検討すべき問題点のリストと調査結果の記録・報告手順が含まれている。
1.8 本指針により、海運業界の関係者全てが海難及び海上インシデントにおけるヒューマンファクターが果たす役割について認識できるようになるはずである。こうした認識に基づき、海運界が事前の策を講じ、よって人命、船舶、貨物の救助、海洋環境の保護、船員の生活改善、より効率的で安全な船舶運航を実現できる。
1.9 本指針は国内法令が許す限り、単独又は複数の国のいずれかがその管轄下又は管轄権内にある船舶に係る海難であることをもって実質的利害を有する海難又は海上インシデントの調査に適用する。
2 調査手順及び技法
2.1 系統的手法
2.1.1 ヒューマンファクターの調査のための段階的な系統的手法のプロセスを次に示す。このプロセスはいくつかの確立されたヒューマンファクターの体系を統合、調整させたものである。いかなるタイプの海難、海上インシデントにも適用でき、プロセスを構成するステップを次に示す:
1 事件データの収集
2 事件経緯の確定
3 不安全行為又は不安全意思決定及び不安全条件の特定
そして不安全行為又は不安全意思決定については、
4 エラーの分類又はルール違反の特定