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1 序-指針の目的

 

1.1 本指針の目的は海難及び海上インシデントにおけるヒューマンファクターの系統的調査について実際的な手引きを与え、効果的な分析と予防措置の策定を考慮に入れている。長期的な目的は、類似海難や海上インシデントが将来発生するのを防止しようとすることである。1

1 指針の趣旨から、「海難及び海上インシデント」という用語は死亡あるいは重大な負傷となった職務上の事故を含んでいる。

 

1.2 船舶は非常に動的な環境で運航される。乗組員は定められた交替作業に従うが、港への到着、港内作業及び出航によってこれら作業はしばしば中断される。これは長期間作業場所で生活するようなものであり、独自の労働生活を形成する。これがヒューマンエラーの危険を増すことはまちがいない。

 

1.3 歴史的にみると、国際海運界は主として技術的観点から海上安全に取り組んできた。従来の考え方はエンジニアリング及び技術的手法を適用して安全の向上と海難及び海上インシデントの重大性を出来るだけ少なくすることであった。従って、安全基準は主として船舶の設計及び機器要件に向けられた。こうした技術的革新にも関わらず、重大な海難及び海上インシデントは起こり続けた。

 

1.4 過去30年間の海難及び海上インシデントを解析し、国際海運界及び各種安全関連機関は船舶の設計や機器に関する技術的要件を重視する方法から発展させて海事産業全体の中で海上安全におけるヒューマンファクターの役割を認識し、これにより徹底的に取り組むようになった。こうした総合的分析が示すように、設計、製造、管理、運転及び保守等を含むあらゆる海事活動の面で人間が関わっていることから海難及び海上インシデントの全てにヒューマンファクターが含まれている。

 

1.5 海運界が海難及び海上インシデントにおけるヒューマンファクターの関わりに取り組もうとした一つの方法が乗組員の適正な訓練と認証に重点を置く方法であった。しかし、訓練がヒューマンファクターの一つの面にすぎないことがだんだんと明らかになった。海難及び海上インシデントにおいて理解し、調査し、そして取り組むべき寄与要因が他にもある。海運業界に関わるその他の関連要因の例をあげると、意思疎通、能力、文化、経験、疲労、健康、状況認識、ストレス及び労働条件がある。

 

 

 

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