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日本企業がエンジン部品の供給に応じなかった結果、韓国企業がどのようにエンジン部品を調達したかに関してはいくつかのシナリオが考えられる。第1は自社生産で対応した、第2は一部の日本企業が供給に応じた、第3は欧州企業から輸入した、である。それらのうちいずれのシナリオが選択されたのかは明確ではない。また、エンジン部品供給不足により新造船竣工スケジュールが遅延せざるを得なくなるのはこれからである、との見方もある。

この問題について、韓国現地インタビューでは、造船企業、エンジンメーカーはもとより業界アナリストに至るまで、エンジン部品供給が逼迫しているのは事実であるものの、大きな問題ではない、というのが共通認識である。

造船所(調達担当)インタビューでも、エンジンやプロペラの供給が逼迫していることを認めている。実際、クランクシャフトを始めとする一部エンジン部品は、韓国内生産品の供給力ネックにより、海外からの調達に切りかえられたケースがあった模様である。また、クランクシャフト不足がエンジン調達コスト、納期に一定の影響を及ぼしたことも認められている。さらに、韓進重工業に対する主機の供給に関して、供給余力の不足により、現代重工業、HSDエンジン両社とも販売に難色を示した事例も聞かれている。

しかしながら、現地インタビュー調査では、エンジン部品の供給力ネックにより、新造船建造工程が大きく変更されるほどの決定的な要素とはなっていないとされている。ある造船企業(調達担当)によると、韓国国内で需給が逼迫していても、世界的には供給過剰であり不足分は海外からの調達が可能である、としている。

このようなことから、現段階では、エンジン部品供給不足によるエンジン生産遅延、さらには新造船建造スケジュール遅延への影響は、一定範囲に留まっていると見られる。しかしながら、今後については、今しばらく様子を見る必要があると言える。

なお、大型エンジン生産能力に関しては、前述のように、現代重工業、HSDエンジンがそれぞれ80〜100万馬力、70万馬力ずつ増強する見通しとなっている。

 

(4) 国産化状況

韓国では、舶用エンジン部品の多くが既に国内調達可能である。現地インタビュー調査によると、国産化率は金額ベースで80〜90%であり、残りの品目は技術的に国産化が困難であると言うより、国産化しても製造コストが高くなるため、経済的メリットがない品目である。このように、大型エンジンの国産化率が高い水準にある背景として、政府が従来から推進させてきた国産化政策と共に、エンジンメーカーが現在までのエンジン生産を通じ経験効果(ラーニング・エフェクト)を享受したことや、エンジン生産拡大により下請け企業が育成されてきたことが指摘できる。

韓国が弱い代表的なエンジン部品は、軸受け、排気弁、過給機、ガバナー装置、燃料弁であり、輸入に依存している。また、クランクシャフト等は、国内の供給が追いつかない状況にあり、日本から輸入されている。

 

 

 

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