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・他方、三星重工業は「ニューミレミアム・ビジョン」を掲げている。全体としては新規事業育成が重要課題であるものの、造船・海洋分野は、客船、コンテナ船に重点を置きつつ、2005年までの5年間に同分野の売上高規模を1.8倍に拡大することを目指している。

 

■韓国造船業界の電子商取引への取り組み

・造船業界のBtoB取引システムとして、造船大手5社を中心にしてe-Market Place構想が進められている。2000年11月に試験稼動、2001年に本格稼動の予定である。同システムが完成した場合には、日本の舶用機器企業もアクセス可能である。

 

■日韓造船企業の競争力比較

・日韓の新造船建造コスト格差は、VLCCで2割程度と見られる。人件費、鋼材、舶用機器のいずれもがコスト格差要因となっており、その背景としては、ウォン安円高、規模の経済性、設備の新しさ、若年労働力の厚さ等による要素格差の安さ、生産性向上が指摘できる。

・他方、日韓の非価格競争力は縮小し、船種によってはほとんど格差がなくなっている。

・従って、日韓の造船業競争力は、大型船を中心に韓国がやや優位にあると見ることができる。

・韓国の造船企業の全般的な問題点として、過剰生産能力、グループ破綻リスク、事業多角化の遅れ、が指摘できる。特に、世界の新造船市場が停滞局面に陥った場合、韓国の造船企業は、その影響を大きく受けることになろう。

 

■韓国の主要造船企業の評価

・現代重工業は、世界最大の造船企業であり、韓国で最も競争力がある造船企業である。半面、現代グループの信用不安発生がリスク要因である。

・三星重工業は、安全性は高いと見られるが、三星商用車の評価損が業績に影響を与える見通しである。

・大宇重工業(2000年10月に3分割。そのうち造船部門は「大宇造船工業」)は、企業分割以降の行方は依然、不透明である。しかしながら、売上総利益率の改善がなされれば、十分に生き残りが可能であると見られる。

・韓進重工業は、財務内容は良好であるが、規模が小さい点、生産性向上に限界がある点が不安材料である。

 

 

 

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