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また、現代重工業を始めとした現代グループ3社で、韓国全体の5割弱を建造している。

・韓国の造船業の労働賃金は、他産業に比べ高い水準にある。そのために、労働力不足問題は、発生していない。韓国の造船業の賃金水準は、日本の4割程度である。なお、2000年以降、労働賃金が再び上昇することが予想される。また、労使関係は、協調的とは言えない。

 

■韓国の大手造船企業の財務構造

・全般に、韓国企業が日本企業に比べ優れている点は、1)売上高営業利益率が高い(本業で稼げる体制が整っている)、2)成長性が高い、である。反対に、韓国企業が劣っている点は、1)資本効率が低い、2)短期的な支払能力が低い、3)金利負担が大きく経常利益が圧迫されている、である。

・大手5杜の財務内容を比較すると、相対的に財務構造が良好なのは、現代重工業、韓進重工業である。三星重工業は金利負担が重く、売上高当期利益率が低くなっている。大宇重工業(2000年10月分割前の旧「大宇重工業」を示す)は従来、財務内容は比較的良好であったが、大宇グループの破綻等により多額の有価証券評価損が発生し、一気に債務超過に転落した。また、安値受注の影響のためか、売上高営業利益率が低下している点も不安材料である。三湖重工業は、財務内容が極端に悪く、グループ他杜によってようやく維持されてきた企業である。なお、現代重工業、三星重工業は、経済危機以降、資産売却による負債圧縮を行っている点は評価される。

・今後、短期的にはウォン高による為替差損、人件費上昇により企業業績がやや落ち込むと見られるが、中期的には、生産性向上、負債圧縮による金利負担軽減が企業業績にプラスに作用するものと見られる。

 

■現代重工業・三星重工業の企業戦略

・現代グループは、5つの小グループに分離される方向にあり、現代重工業は2003年までの早い段階で分離される見通しである。現代グループは、最近、しばしば経営危機説が流れている。

・現代重工業は、長期ビジョンとして「ビジョン2010」を掲げている。全体として非造船部門の強化を強調しつつ、造船部門についても2010年までに売上規模を倍増することを目指している。同年には、一般商船、ケミカル船、特殊船で世界第1位、客船で世界第1位を目標としている。

 

 

 

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