(3) 電子マニュアルからスタートする構築アプローチ
1999年末から巻き起こったポータルサイトの立ち上げブームは、2000年春頃から米国を中心に“e-マーケットプレイス2”に様相を代えて、よりビジネス活動の場としての機能を打ち出してきた。
この流れは、既に海事業界にも及んできており、海外においては標準部品や中古部品のマーケットであるILSmart.com3、香港を拠点とする船舶管理会社が主導するMarineLINE4等が知られるところであり、また我が国においても主に用船や中古船売買を仲介するマリンネット5やE-JAN6が立ち上げられてきている。
このような状況の中で、本調査研究においても高度構報化アフターサービスの概念設計の方向としてポータルサイトの構築を上げてはいるが、アフターサービス実態調査やサービス実験の結果によれば、上述の他のサイトと同様のアプローチで調達・販売中心の“e-マーケットプレイス”を起こすやり方では、多くのリスクを伴うことになる。
「3.5サービス実験評価アンケート結果の整理・考察」節の内容と繰り返しになるが、舶用メーカがネットビジネスに取り組む際の重要なポイントは、多くのe-マーケットプレイスが陥っている、単なる“部品が買えます”のみを提供しても駄目であることである。
アフターサービスの実態調査から明らかなように、現在のSIと舶用メーカ(代理店含む)間のビジネス形態においては、ネットから部品をワンクリックで発注するようなケースはほとんど発生しない。突発的な事故発生や定期検査時等において、多くの情報交換や交渉を、多くの関連する者の間を経てビジネスが完結している。
決して“部品が買えます”の発注機能が不要というのではなく、表4-1で示した様々な情報・機能と連動したビジネス機能が必要なのである。
船社・船舶管理会社と舶用メーカが共に高度情報化によるメリットを求めて取り組みを推進していくためには、少なくとも現時点において、情報化に対する何らかの共通項(共通ニーズ)が必要である。その共通項をトリガーとして、またそれを高度情報化アフターサービスのスタートポイントとして、“ポータルサイト”しいては“e-マーケットプレイス”(本調査研究のテーマにおいては、いわば“e-サービスプレイス”の呼称が適切)の構築を進めていくのである。
2 米デロイト・コンサルティングの調査では、現在、世界中で1,500を超えるe-マーケットプレイスが存在している。
また、米フォレスターリサーチによると、2004年の米企業間電子商取引額は2兆7,000億ドルを超え、全企業間取引の2割に達する。
3 http://www.ilsmart.com/marine.htm
4 http://www.line.net/ 香港船舶管理会社Wallemと地元ベンダArena社が構築
5 http://www.marine-net.com/
6 http://www.e-janworld.co.jp