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バンカー油を使用できることが舶用機関の最大のメリットであり、現在の問題を解決できなければ物流コストの上昇、エネルギー問題に至ることも考えられる。本研究によって、こういったトラブル燃料の判定基準を確立することができればこの問題の解決に大きな前進となる。

 

2-6 一般燃料性状とスカッフィングの関係

低速ディーゼル機関で使用する燃料油にスカッフィングを起こし易いものが存在することは、周知の事実である。

もしこれらの一般燃料性状によって、またはこれら性状の組み合わせによって、燃料の危険度合いを評価できれば、トラブルの未然防止の観点から非常に有効である。

しかし今回の調査研究の結論として、スカッフィング等を引き起こした燃料には特異な性状を認める事は出来るが、スカッフィング等の燃料障害と一対一の関係の存在、更にはその因子を持って障害を予測し特定できる様な物は見出せなかった。

結果的に燃焼障害等を引き起こす恐れのある燃料は、直接燃焼試験を実施しその結果で評価する必要があるとの平凡な結論に達した。

以下に参考の為、実際にスカッフィングを引き起こした燃料の特徴を、敢えて例外が多いことを承知で纏めれば、次のようになるであろう。我々が、半ば常識と思っていた粗悪燃料との乖離が大きい点に注目願いたい。(OHP:6)

・スカッフィングは、粘度360cStクラスに多く発見される。

・CCAIは、むしろ低目のものスカッフィングの発生が見られる。

・硫黄分は低めであるが、低さに比例しスカフィングが発生している訳ではない。

・灰分は、分布範囲の中では比較的低めのものに発生が認められる。

・バナジウムは、分布範囲の中では比較的低めのものに発生が認められる。

・FCC触媒(Al+Si)も、分布範囲の中では比較的低めである。

・.陸上廃油成分も、分布範囲の中では比較的低めである。

IS08217等の性状は、満足している燃料にスカッフィングが発生している。逆にこれら燃料規格は機関の信頼性を確保する「品質規格」では無いことが逆説的に証明されたとも言える。

 

3 調査研究の纏めと今後の課題

舶用低速ディーゼル機関は、熱効率において優れている事に加え、安価な燃料を使用できることから、海運界の経済性を下支えしてきた。しかし安価である燃料は、その流通過程を含め品質的に満足な物が供給される保証が無く、時として機関に燃料に起因する障害を引き起こす。これら粗悪燃料の障害を軽減するには、海運界を取り巻く全ての団体の自己犠牲的な取組みが要求される。

問題をより複雑にしているのが、舶用燃料の多様性である。この多様性は、一定のところに留まらず、製法を含めた供給体制の日々の変革によって、増大している。この結果として、性状としては規格内の燃料を使用しても原因が定かでないトラブルが発生する。機関自身の新しい設計等が、更に問題を複雑にする。

この様な観点で、最近問題となっている燃料の燃焼性と低速ディーゼル機関の障害について調査研究を行った。その詳細は、前章までに詳しく述べた。以下に簡単な纏めと、次年度以降に解決すべき課題について示す。

 

 

 

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