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2-4 示差熱分析

採取したサンプル油に対し、示差熱分析『TG(Thermogravimetric Analyzer)-DTA(Differential Themal Analyzer)』を実施した。示差熱分析の各領域は、次の情報を与えてくれる

1] 第一領域の終点部の発熱の大小が、着火性に関連する

2] 第二領域の熱収支が、留出分から残渣分への燃焼の移行に関連する

3] 第三領域での発熱の大小が、燃焼時間とか主燃焼の良否に関係する

 

今回の調査研究では、第一領域での分析に着目した。実機で燃焼障害を起こした燃料サンプルの場合、第一領域の質量減量が大きくダンベル燃料の一種と推察され、特異な燃料であると思われた。試料の加熱時間が100℃/分の条件で、300℃における第一領域の質量減量が約30%以上のサンプルを仮にダンベルグループと呼ぶ事にして、事象を纏めてみた。

同一試料に対する第一領域の終点の発熱のピーク値(DTA)を加熱時間を100℃/分と20℃/分の条件で整理すると、ダンベルグループの属する燃料の加熱条件100℃/分のDTA値が、20℃/分に比べ5〜25倍の大きさに成ることが判った。

この事象が、第3領域の燃焼の良否に関与している事が証明されれば、着火の状態で最終的な燃焼との関連も論ずることも可能で画期的なことである。

示差熱分析による第三領域の燃焼状態と、実機の異常との相関を明確に出来る事だけでも、燃料を使用する前にトラブルの予防措置が可能なものとなり、非常に強力な手段を海運関係者に提供出来ることになる。

 

2-5 燃焼火炎分析

2-5-1. 調査研究の目的と試験方法

燃料性状によってリング・ライナーの異常摩耗が引き起こされるメカニズムは未だブラックボックスであるが、一つに燃料性状によっては燃焼火炎の燃え切り長さや燃え切り時間が延びて、ライナー温度を上昇させることが考えられる。ここでは、ディーゼル燃焼室を模擬した高温高圧の定容燃焼器中に燃料を噴射し、自由噴霧火炎の燃え切り長さ、燃え切り時間を高速度ビデオにより観察した。特に異常摩耗を起こした燃料と通常の燃料の比較を行い、その燃焼火炎の特性の違いを明らかにした。

2-5-2. 試験結果の纏め

調査研究の結果、実際に異常摩耗を起こした燃料の燃焼火炎の燃え切り長さは、空間的にも時間的にも長いということが明らかとなった。(OHP:5)

しかしこれらの燃焼プロセスによって、異常摩耗になぜ至るかは未だに不明確である。例えば火炎が壁面に接触していなくても、高温の既燃ガスは壁面に到達している可能性もある。さらにライナーの異常摩耗はライナー表面温度の上昇に起因することは容易に想像でき、燃料性状と壁面温度の関係、牽いては機関の設計法との関係も別途課題を設けて明らかにする必要がある。

燃料に起因するトラブルを防止するには、燃料を積み込む前にチェックできることが重要で、今年度の研究成果を基にした装置によって、多くの燃料サンプルに対応できる可能性を示した。

 

 

 

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