日本財団 図書館


着火特性および燃焼可視化試験に、本項の示差熱分析を追加した。

(2) 実施の方法および団体

調査研究受託、代表会社

(株)ディーゼルユナイテッド

運輸省船舶技術研究所

(3) 実施の期間

1] 開始 平成11年4月1日

2] 終了 平成12年2月15日

 

2-1 燃料の収集と一般性状分析

短期間の間に非常に有益なデータが集まった。計24個のサンプルを調査研究に供した。この中で特に実船で燃焼障害が確認されているサンプル(NYK1)とか、燃焼が困難なサンプル(SHELL1)は、燃焼障害の「悪さ」の尺度として有益である。また船主協会殿より提供された、アメリカ西海岸のサンプル(Other1〜8)は、本船主機の現象との相関を確認する事により、有効に活用されるであろう。

 

2-2 機関調査対象船の選定と調査

定期的に機関側のデータを収集出来て且つ、燃料との相関関係の検討が可能な調査対象船を下記基準で3船選定した。

● 機関メーカーの従来の経験から、リング・ライナにスカッフィングが発生するとシリンダライナの表面温度がノコギリ波状に変動することが解っていること。また、燃焼時間が延びてシリンダライナに燃焼火炎が干渉するとライナ温度が上昇すると予想されることから、「ライナ温度をモニターできる計測装置」を備えていること。

● 燃料油の燃焼性を評価するために燃焼圧力計測装置が装備されていること。その結果、燃料サンプルの採取と移送、機関性能・ライナ温度・燃焼圧力データ(燃焼解析置「NH-X」の利用)の採取を日本郵船(NYK)殿に依頼した。

燃焼圧力データの解析の結果、熱発生率の90〜95%が終了するクランク角度の大小が、異常燃焼の評価指標として非常に重要な意味を持つだろう事が認識された。(OHP:3)

即ち、燃焼障害を起こした燃料の熱発生の終点は、遅くなる。クランク角度と障害の度合いを解析することによって、実船でのモニタリングが可能となる。

 

2-3 FIA(着火特性)分析

舶用燃料油の着火性、燃焼性は、ディーゼル機関の性能、耐久性、故障および排ガス組成などにとって非常に重要な意味を持つものである。ところがこれまで舶用残渣燃料の着火性を簡便に測定する適当な方法がなかったために、燃料性状からの計算値によって推定することが行われてきた。簡便法の一つであるCCAIは、密度を動粘度で補正したものであるが、これだけでは低速機関の燃焼性能を評価するに不十分ではないかとの意見もあった。

今回の調査研究では、収集した舶用燃料油についてFIA分析を行ない、着火・燃焼特性の解析を行なった。この結果を基に燃料評価方法について検討した結果、FIAは着火・燃焼特性の評価法として妥当なものであるとの結論を得た。(OHP:4)

特に実船でリング・ライナの摺動部などに燃焼に起因した障害を発生させた燃料の熱発生率のパターン(燃焼期間と燃え切り時間)とかFIAセタン価には、特異な値が現れることを確認できた。FIAの特異現象と実機の障害を関連付け出来れば、障害を予測する手段として有益なものになる。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION