3. 実施内容
3.1 海水の塩分の結晶硬化による膜材展張機能への影響評価
オイルカーテンを船舶に搭載する場合、緊急時に即応が可能なために船舶の外縁周辺に収納されることとなる。この際、荒天時等にオイルカーテンの膜材の隙間に海水が浸入し、それが乾燥することにより、オイルカーテン同士が塩分により固着し、緊急時にスムーズな展張が出来ない状況が懸念される。
そこで、本実験では投下実験に使用する膜材について、収納状態(巻き状態、蛇腹に折り畳状態)でのオイルカーテンを24時間海水中に浸隻した後、強制乾燥させることで膜材に付着した海水を固着させ、膜材の自重による展張を行った後、自重だけでは展張しきれなかった部分について引張り荷重を加えることで、展張するために必要な力を測定した。
その結果、膜材は自重により全長にわたり展張されることはなく、膜材の下端に取り付ける重錘の重量により展張されることが分かった。そして、その荷重は本実験ケースの最大値を取れば0.28kgf/5cmの重錘が必要となることが分かった。これを単位メートル当たりに換算すると5.6kgf/mの重錘(空中重量)が必要となることとなる。
3.2 インナーカバーの最適設計
オイルカーテンの構造は、外殻の役目を果たすアウターカバーの内側に膜材が直接収められる一重構造と、膜材のアウターカバーの中間にインナーカバーを有する多重構造が考えられる。前者の場合、アウターカバー開放の後、すぐに膜材が展張できるという作業性の単純化という大きな利点がある。しかし、過去の例では、航海中の船舶のライフラフトの外殻が波により破損した例もあり、波力等によるアウターカバーの誤動作による展張の防止やアウターカバー自身の損傷に関する対策としてインナーカバーを設けるなどの多重構造を取ることは有効な構造であると考えられる。上記の理由から、インナーカバーの構造として図1に示すものを検討した。
図中の1]は膜材、2]は開袋(かいたい)ロープ、3]はインナーカバー、4]はマジックテープ、5]はアウターカバーを内側から支持する金属性のハーフパイプであり、同時に展張時の膜材の重錘の役割を果たすものである。このハーフパイプの外側の円弧とアウターカバーの内側の円弧のサイズを近い値に設定することで隙間などの空間を少なくておき、アウターカバーが十分広く開放することでハーフパイプがアウターカバーに支えることなく重錘として自由落下できるようにセットしておけば、通常時にはアウターカバーに作用する波力等の外力はハーフパイプが支持することとなるため、アウターカバーの損傷を防止することができる。すなわち、1]から4]の構造は前年度の調査研究と同様であるが、頑丈なライフラフトの外殻を壊すほどの航海中の波力に対抗するために、アウターカバーを内側からささえる金属製のハーフパイプの中に膜材本体を収める構造とした。また、このパイプは頑丈で重量を有するものとなるため、その一端を膜材の下端と結合することで膜材の重錘の役割も兼ねる構造とした。このためには、膜材を中心から巻き込む収納方法では重錘であるハーフパイプが膜材の中心部に位置し、膜材をその内側に収めることができなくなるため、膜材の収納方法はその下端が外側から見える位置に収納できる蛇腹式(膜材を半分づつ折り重ねて行く方法)とした。