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4.3 現行基準との比較

かくて、危険物の岸壁における荷役許容量は、保安距離が許容量の立方根に比例するとの仮定を置くことにより、比較的整理された形で決定することが出来る。そこで、次にはこの結果の現行の基準とどのような関係になっているかを検討することは興味深いのみならず、これを実際に適用するに当って頗る重要である。比較結果は表4中に同時に示される。もとより、両者は分類方式、物質選定が既に記したように一部異なるので完全な比較は難かしいが、これから一般的には次のようなことがいえるように思われる。

まず、本委員会案は危険性の大きい物質に厳しく、危険性の小さい物質は緩和をはかった形になっているが、この傾向は市街地に比較的近く、事故の際第三者に対する影響の大きいA岸壁で最も顕著である。方、市街地からかなりの距離があるC1岸壁は現行基準に比べ緩和の傾向にあり、これは近年の危険物の流通量の増加に対応して好ましいと考えられる。しかし、爆発性、引火性等の特に危険の大きい物質に対しては、現行とほぼ同じ許容量となっている。また、ここの案は従来許容量の定めがなく、安全対策の面からのみ規制されていた物質をも、一定の量に制限しているが、この点については関係者の意見等からみて、特に流通上に障害はないと判断した。

最後に、本委員会案と現行基準の間で基本的な考え方の上で最も異なる点は、すでに方針で示したように本委員会案においては、各岸壁ごとの許容量を危険の性状にかかわらず同一の関係にもとづいて決めていることであり、このため規制の全体としての構成は簡素化され、数値の根拠は現行基準に比べて明瞭になっているが、反面、各岸壁の特殊性や危険物の性質、取扱い量その他の要素によるきめの細かい補正は行い難くなっている。しかし、このような簡素・明瞭化は資することのほか、申請者側の過度の負担を除くとともに合理性が示されることにより遵法意識の涵養に寄与しうる等の点において評価しうるものと考えられる。

 

4.4 荷役許容量決定上の問題点

以上、危険物の岸壁荷役許容量を明確な方針にもとづいて検討し、現状においてより適切と思われる改正案を作成したが、これには、なお幾つかの問題点が残されている。これらは、いずれ後日検討する必要があるように思われるが、以下審議の過程で議論の対象となった2〜3の問題点を列記する。

(1) 2種類以上の危険物を荷役する場合の許可基準の運用については、とりあえず現行の方式をそのまま適用することとしたが、この妥当性については、なお検討の余地がある。この問題に関し、現在考えられる一つの改正案は次章に記した。

(2) C2岸壁に対する許容量を本委員会案では、現行通りのC1岸壁の2倍としたが、この2倍という数値の根拠は必ずしも明確ではない。今後の検討が望まれる。

 

 

 

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