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3.5.2 荷役許容量の規制の緩和についての検討

(1) 現行基準の考え方

現行の危険物荷役に係る基準は、荷役中に危険物の火災、爆発、流出、拡散などの事故が発生した場合、付近住民の身体、生命又は施設等への被害を防止するために、保安距離を設定し、取り扱う危険物毎に保安距離に応じた荷役許容量を定めている。

また、2種類以上の危険物を荷役する場合においては、事故の影響が船全体に及び積載危険物全てを巻き込んだ場合の危険性を考慮し、船舶に積載しているそれぞれの危険物の量をそれぞれの危険物の荷役・停泊許容量で除した合計(いわゆる「商の和」)が、許容可能な最大値である1以下となるように基準となる計算式を定め、積載危険物全体に係る規制をかけている。

 

(2) 規制緩和の考え方

前述3.5.1の状況から、コンテナ荷役におけるガントリークレーンやコンテナ・容器等の安全性の向上によって、火災事故等船全体に及ぶような事故発生の可能性が減少したことを勘案し、危険物接岸荷役許容量を緩和する余地が存在すると思料される。

緩和の範囲については、本委員会で検証された安全性の向上部分と、荷役許容量との相関について、具体的な数値の根拠を求めることは困難であるが、コンテナによる危険物輸送の実態、モーダルシフトの推進状況や船型の大型化などの社会的要請を勘案すると、現行基準の2倍程度の緩和が適当であるものと思料される。但し、前述のとおり火薬類の爆発事故については、火薬類特異な危険性に着目した場合、許容量を緩和する程度には安全性が向上したとは言い難い状況であることから、火薬類の荷役許容量については、現行通りとすることが適当であるものと思料される。

 

(3) 「商の和」計算の煩雑さの緩和

今回の規制緩和要望においては、「商の和」の規制に係る計算の煩雑さの緩和についても求められているところであり、また、複数のコンテナを頻繁に出し入れするコンテナ輸送の荷役形態においては、「商の和」の計算に複雑に影響する停泊許容量が、当該コンテナの積載場所が区画を開放された場所であるか否かで異なってくるという現行の基準の定め方が、「商の和」の計算を煩雑にしている要因の1つであると指摘されている。

これに対しては、個々の危険物がコンテナという容器の中に納められていることに加え、前述のとおりガントリークレーンやコンテナ・容器等において安全性の向上が図られている現状においては、停泊許容量の基準を積載場所により区別するだけの危険性の差がなくなってきていることから、積載場所に関わらず緩やかな方の基準(荷役許容量の5倍)に統一することが適当と思われる。これによって計算の煩雑さが緩和されるとともに、危険物貨物輸送の効率化にもつながるものと考えられる。

 

 

 

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