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この人と

 

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全国漁業協同組合連合会

漁政部長

宮原邦之(みやはらくにゆき)

 

<プロフィル>

昭和十九年生まれ三重県出身、四十二年早稲田大学法学部卒業、同年四月全国漁業協同組合連合会入会、六十二年購買事業本部監理役、平成三年漁協組合組織化対策室次長、八年信用事業推進部部長などを経て十一年から現職

 

― 小型漁船で海中転落が多いのはどうしてでしょうか。

宮原 漁業者の高齢化やコスト削減から一人乗りや二人乗りの操業が増えたことが底流にあります。特に一人乗り操業は死亡や行方不明などの痛ましい事故に直結しやすいのです。

― その対策は?

宮原 一人乗りや二人乗りの対策を重点に考えていかねばならないと言えます。そこが漁船の安全対策のスタートになります。

具体的には、1]集団操業を行うことで事故が起こった場合、早期発見がしやすくなります。2]救命衣を着用することにより救助活動がスムーズにでき、また生存の可能性を高くすることができます。

― 救命衣の常時着用の現状について

宮原 型式認定を受けた救命胴衣はなかなか着用しにくい実態があります。漁業者の自主的な取組みとして、浮力は救命胴衣には足りませんが、ある一定時間海面に浮かんでおれるものを、テストを繰り返したうえで開発し、常時着用する運動に取組んでいるところが北海道を発端に全国的に増えてきました。また、全漁連の調査結果を全国会議でも報告し、救命衣・安全衣に対する認識が広まってきています。

― 常時着用も夏場が問題でしょうね。

宮原 そうなんです。それを解決するものとしてポシェット型というのがあります。海中に転落してから自動的に膨張して救命浮環のようになるのです。瀬戸内海地区や西の方でこれを採用しているようです。いずれも個々での取組みの段階ですが、これを全国的に広げていかねばと思います。

― 行政の動きはどうなっていますか。

宮原 運輸省も積極的な取組みをしており、今年度から委員会を設置して小型船の安全担保にとりくんでいます。そのテーマの中に救命衣の問題も大きな課題として位置づけられています。私もメンバーに入っていますが、「法定備品でないものでも着用させていくこと。制度面の手当ても視野に入れて検討していかなければならないのではないか」という主張をしているところです。

― 第五龍寶丸の事故について何かコメントを。

宮原 日ごろから安全対策は当然されていたことでしょうが、底引き網に思わぬ大量の魚が入って何らかの原因で転覆したのでしょうが…。乗組員が救命胴衣を着用していなかったことが指摘されています。なぜ着用していなかったかということですが、作業性が悪いことにつきると思います。これを教訓に小型船以外についても常時着用型の救命衣で対応出来る制度を取り入れることが必要でしょう。それと若い人にも受け入れられるファッション性も導入するとよいと思います。

これを着ていないと海の男ではないというところまで認識を変えていくべきだと思っています。

― 最後に一言。

宮原 全漁連では毎年、事故防止安全対策全国会議を開催して、全国運動を展開しています。

全国的にはユニークな活動によって成果をあげている漁協や組織があります。これらを全国会議で紹介し、各地での取り組みや促進に役立てたいと考えております。

(全漁連で、聞き手=村上)

 

 

 

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