衝突事例 貨物船同士の衝突事故
夜間、船舶の輻輳する神戸港沖において、貨物船同士が横切る態勢で接近中、両船が第三船とも互いに進路を横切る態勢で接近する状況下、両船が衝突し、一方の貨物船が沈没した事例
船舶の要目等
船種、国籍 総トン数 A船 貨物船(コンテナ運搬船)中国、四、七九六トン
B船 貨物船(セメントタンカー)日本、二、〇三七トン
発生日時 ○年二月二十三日
発生場所 神戸港外
気象・海象 晴 風力六
事件の概要
A船は、中国人船長ほか二八人が乗り組み、コンテナ二二〇トンを載せ、二月二十二日午後八時三十六分名古屋港を発し、神戸港に向かった。
船長として神戸港に二回の入港経験のあった船長は、翌二十三日午後五時三十分ごろ友ケ島灯台の約二海里南方に達したとき、昇橋して操船の指揮につき、一等航海士を見張りに、甲板手を操舵にそれぞれ当たらせて進行した。
同七時十二分ごろ船長は、神戸灯台から一九四度六・三海里ばかりの地点に達したとき、針路を一五度に定め、約一一ノットの全速力前進にかけて続航し、同時二十二分ごろ同灯台から一九三度四・四海里ばかりの地点に達したとき、左舷船首五四度二海里ばかりのところに、B船の白、白、緑三灯を認め得る状況で、その後方位がほとんど変わらず衝突のおそれがある態勢で接近していたが、折から右舷船首四点一・八海里ばかりのところに、西行する三隻の小型船を認め、これらの前路を横切る態勢であり、これら付近の船舶に気をとられたまま進行した。
同二十五分ごろ船長は、自船の予定錨地まで約三・三海里に接近したので機関用意を命じて徐々に約一〇・三ノットの港内全速力に減じ、そのとき白、白、紅三灯を表示した全長一七四メートルの大型コンテナ船が右舷船首二五度二・五海里ばかりのところに、B船が左舷船首五四度一・四海里ばかりのところに、それぞれの方位がほとんど変わらないまま接近していたが、見張り不十分で、B船に気付かないまま続航し、同二十八分ごろ右舷船首二二度一・三海里ばかりに接近した大型コンテナ船が右転したので同船との衝突のおそれがなくなり、また右舷側の小型船も右舷後方に替わったとき、左舷船首五八度〇・七海里ばかりのところに、B船の白、白、緑三灯を初めて認めたが、同船が避けるものと思い、直ちに機関を停止し右舵一杯とするなどの衝突を避けるための措置をとることなく、機関を約六ノットの半速力に減じたのみでそのまま進行し、同三十分ごろB船が六五〇メートルばかりに接近したとき、衝突の危険を感じて機関を微速力前進、次いで停止とし、さらに半速力後進を令したが、及ばず、原針路のまま、同三十二分神戸灯台から一九三度二・七海里ばかりの地点において、B船の右舷側前部にA船の船首が後方から約六〇度の角度で衝突した。
また、B船は、船長ほか一二人が乗り組み、ばらセメント三、三〇八トンを積み、同月二十二日午後十時四十分福岡県苅田港を発し、兵庫県尼崎西宮芦屋港に向かった。
翌二十三日午後六時二十五分ごろ船長は、明石海峡航路西方灯浮標付近に達したとき昇橋し、一等航海士を見張りに、甲板手を操舵にそれぞれ当たらせ、自ら操船の指揮について明石海峡航路を航行し、同七時ごろ同航路中央第三号灯浮標から一七三度三〇〇メートルばかりの地点おいて、針路を八六度に定め、機関を約一〇・一ノットの全速力前進にかけて自動操舵として進行した。
同二十二分ごろ船長は、神戸灯台から二一九度三・六海里ばかりの地点に達したとき、北上中のA船が右舷船首五六度二海里ばかりのところにその方位がほとんど変わらず衝突のおそれがある態勢で接近し、また、右舷船首一点二・九海里ばかりのところに三隻の横並びの小型の反航船が存在する状況となり、同二十五分ごろそれらの反航船が右舷船首二点一・九海里ばかりのところに接近したとき、レーダーを監視中の一等航海士が、右舷船首五四度一・四海里ばかりにA船の映像を認め、北上船であることを船長に報告したが、そのとき左舷船首一六度二・六海里ばかりのところに大型コンテナ船が、白、白、緑三灯を示してその方位がほとんど変わらず衝突のおそれがある態勢で急速に接近していたため、原針路、原速力のまま続航した。