海の気象
海洋気象観測船「啓風丸」の就航
広沢純一(ひろさわじゅんいち)
(気象庁気候・海洋気象部 海務課技術専門官)
はじめに
気象庁では、気象災害の防止・軽減、大気海洋相互作用の解明、海洋汚染の監視等のため、海洋気象観測船による日本近海・北西太平洋域の海洋気象観測(海洋観測と海上気象観測)を行っています。
海洋気象観測船「啓風丸」(一世)は、昭和四十四年に建造され老朽化が著しいため、代替船を建造することとし、「啓風丸」(二世)(一、四〇〇トン型)として平成十二年九月に就航しました(写真)。
「啓風丸」(二世)は、季節予報やエルニーニョ予報、地球温暖化予測の精度向上に必要な北西太平洋域の海洋観測を強化することを目的とし、海洋表層の水温・塩分の水平・鉛直分布や海流、洋上大気・表面海水中の二酸化炭素濃度などの詳細かつ効率的な観測を行っていきます(図)。
「啓風丸」の主な観測装置
(1) 曳航式水温水深塩分計
従来の海洋観測は、観測点でいったん停船し、機器を海中に降下させて観測や採水を行った後、次の観測点に向かうことを繰り返していました。これに対し、曳航式水温水深塩分計(以下、曳航式CTDといいます(注)。)は、海洋表層の深さ三〇〇メートル程度までの水温・塩分の水平・鉛直分布を、航走しながら連続的に測定するもので、広大な海域を効率よく観測することができます。
曳航式CTDは、水温・塩分・水深の測定機器を搭載した曳航体と呼ばれるものを海中に降ろし、船で曳いて観測します。曳航体は、飛行機の翼のような昇降舵を持っており、これを動かして深さ二〇〇〜三〇〇メートルから海面近くまで昇降を繰り返しながら連続的に観測します。
(2) 航走用二酸化炭素観測装置
洋上大気中と表面海水中の二酸化炭素の量を、航走しながら連続的に測定する装置です。