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中村寛 Hiroshi Nakamura

 

1965年3月31日生まれ

1990年 日本大学大学院文学研究科哲学専攻博士前期課程修了

1992年 「オーケストラのための“LITANIAE”」

第3回Vienna Modern Mastersオーケストラ・レコーディング賞佳作

1996年 「クラリネットとピアノのための“TONOS”」'96秋吉台国際作曲賞ノミネート

1997年 「アンサンブルのための“DIE VISION DES PHLOXES”」第15回ICONS国際作曲賞(イタリア・トリノ)第1位

「オーケストラのための“PURGATORIO”」第5回タラゴーナ市国際音楽作曲賞(スペイン)第1位

2000年 「「音楽劇“Forfφrerens Dagbog−誘惑者の日記”」東京文化会館「舞台芸術創造フェスティヴァル2000」舞台作品募集佳作入選

作品は、Settembre Musicaフェスティヴァル(トリノ)、バルセロナ交響楽団など国内外で多く演奏されている。現在、和洋学園講師。

 

Klage der Ariadne

アリアドネのなげき

 

「アリアドネ−それはアニマである。彼女はテセウスに愛され、彼を愛した。しかしその時、彼女は糸を持っていた。彼女は幾分“蜘蛛”であった、あの怨恨(ルサンチマン)の冷たい生き物の。他方、テセウスは“高等な人間”のイメージである、そのおしまいぶりを全て持った…彼女が彼を愛し、彼に愛されている限り、彼女の在り方は封印され、糸で結び付けられている…しかしディオニュソスか近づく時、彼女は知るのだ、真の肯定が何であるかを」(G・ドゥルース『ニーチェ』)

暗い炎を燃やす我が裡なるソドム。無数の瓦礫の連鎖の上に、なお「地に倒れている者達を踏みつけて進んでゆく」(W・ベンヤミン『歴史の概念について』)この世界の廃墟。音を書き継ぎながらずっと想っていたのは、偏にその負い目(シュルト)、ツァラトゥストラの言う“吐き気”だ。私は知ったのです、あなたから、「私が私である時、私は君である」(P・ツェラン『Lob der Ferne』)ことに無限に頷いてゆく、その意味を…

「もう誰も暖めてくれないの、誰も愛してくれないの?与えてください、熱き手を、心の火桶を、孤独の果てにいる私に!…委ねてください、残酷な敵、あなたを、私に!…戻って来て、あなたが所為で蒙る責め苦もろとも!私の涙は流れゆく、あなたに向って!そして私の最後の心の炎は、あなたへと燃え上がる!ああ、戻って来て、私の未知なる神!私の傷み、私の最後の歓びよ…』(ニーチェ『アリアドネの嘆き』)

冬の凍てつくヴィーンで、93年に書いた一連のスケッチを基に、昨秋、東京で脱稿した。この度、拙作に演奏の機会を与えてくださいました皆様に、心よりの御礼を申し上げます

 

 

 

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