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渡辺俊哉氏は昭和49年(1974年)3月生まれの26歳。東京芸術大学卒業後、現在、同大学院作曲専攻に在学中。1999年度武満徹作曲賞第3位入賞。

 

池田悟氏は昭和36年(1961年)3月生まれの39歳。東京芸術大学大学院作曲専攻修士課程修了。佐藤真、大槻寛両氏に師事。1988年第57回日本音楽コンクール作曲部門第1位。オペレッタ作曲、上演など音楽活動を続けている。

 

中村寛氏は昭和40年(1965年)3月生まれの35歳。日本大学大学院文学研究科哲学専攻博士前期課程修了。多田栄一、三善晃両氏に師事。現在教職に就いているほか、音楽評論活動もおこないつつ、創作活動を続けている。1977年、トリーノの<第15回ICONS国際作曲コンクール>第1位、<第5回タラコーナ市国際作曲賞(スペイン)>第1位。

 

小林寛明氏は昭和48年(1973年)10月生まれの26歳。桐朋学園大学音楽学部作曲科卒業後、同大学研究科修了。1998年第67回日本音楽コンクール作曲部門第2位。遠藤雅夫、安良岡章夫両氏に師事。現在母校の講師をつとめている。

 

近藤春恵氏は昭和32年(1957年)3月生まれの43歳。東京芸術大学卒業。1989年第58回日本音楽コンクール作曲部門第2位ほか、1993年<バーロウ国際音楽コンクール>第4位、1997年<奏楽堂日本歌曲コンクール>第1位。創作活動を活発に展開している。

 

入選作に選ばれた3作については、寄せられた<作曲の意図>について紹介しておこう。

 

池田悟氏の『管弦楽のささげもの Orchestral Offering』:

「相対立する楽想が出会い、呼応したり拮抗したり融合したりしながらエネルギーや緊張感を高め、発散し、より大きなうねりになっていく。序、葬送、スケルツォ、フィナーレなどのエッセンスを単一楽章にまとめた。

 

中村寛氏の『Klage der Ariadne−アリアドネのなげき−』:

ニーチェの同名の詩を鍵語(キーワード)に同情や憐憫では解決し得ない人間存在の本来的な非情さを、そうした同情を告発する音の暴力性と無慈悲な静けさとの対比によって措定する試み、音がその切実さを担うことのみを旨とした。」

 

小林寛明氏の『百億の昼と千億の夜』:

「オーケストラの音色を楽器セクション様々なレヴェルの集合体に分割し、それらを混在させつつ相互の均衡を保つ事。これを実現するためには、素材相互間のバランスを計量するために、常に立ち返り、参照すべき基準点(D#音)か必要とされました。そのD#音は曲中を様々な音色、音域で貫いていますが、必ずしも音楽的素材として第一義的なものではなく、他の素材と共に均衡を作りあげていく、音響的に分裂不可能なものとして着想されています。

1998年11月末、冒頭の楽想から内なる意志を聴き出した事により、以上の様な作業の方向性が決定。翌年2月初めに完成されました。」

三氏それぞれの<作曲の意図>がどのように演奏を通じて、私たちに感得され、理解され、また享受されるものか、やがてやってくる第2次選考会でではなく、これらの曲が生きいきと鳴り響くだろう今夜のコンサートの会場で是非確認したいものである。

 

 

 

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