選考方法は、およそ昨年までと同様のやり方が採られたが、今回から<日本交響楽振興財団奨励賞>の選考も加えられ、入選作品決定の前に、この奨励賞該当作品の選考を加えることとなった。
第1次選考は、昨年までと同様、委員それぞれが選考対象と考える作品を曲数を限定せずに、挙手によって推薦する形でおこなわれた。その結果、0票であった4曲、1票であった2曲のほか、2票の4曲については、個別に意見交換をおこなった上で、いずれも選外とした。
これら10曲を除いた3票以上の9曲について、今後は第2次選考に入った。9曲から5曲を残すために、今度は委員が一人ずつ、5曲以下の推薦作を挙手で提示する方策が考えられた。この形で6票を獲得した2曲をまず残し、また0票だった1曲と1票だった1曲を選外としたので、残る5曲(3票2曲、2票3曲)から、さらに3曲に絞るため、挙手を求めた。結果は5票(2曲)、3票(2曲)、そして2票(1曲)となった。この内5票を集めた2曲は、前の段階で残した2曲とともに奨励賞候補とし、さらにこの段階で3票を得た2曲について、二者択一で挙手による選択を求めたが、いずれも同票(3票)となった。奨励賞は原則として5作と定めたが、論議の末、今回に限り、以上、残された6作に対して<日本交響楽振興財団奨励賞>の授与を決定した。
それは受付番号No.3、No.5、No.11、No.15、No.16、No.19である。
今回は、さらにこの6作品の中から、第2次選考会、すなわち<作曲賞>決定のための公開演奏をおこなう3曲を選ぶ作業、いわゆる<入選作>の選考に入った。これを第3次審査と呼ぶならば、委員が各々3作に対して挙手で推薦という形で結果を得たが、5票がNo.15とNo.16、つづいて3票がNo11、2票がNo.3とNo.19、1票がNo.5というものであった。なお、書面審査の評価も、ここで有効とされたため、No.16は合計6票となった。
この入選作の中で、ひとつ問題となったのは、その1曲が秋山和慶氏によって、短いリハーサル時間ではかなり演奏が困難であるものとの判断の対象となった。これについてさまざまな意見の交換、議論があったが、最終的にもう一度、秋山氏の考えを訊くこととなった。後日、座長から秋山氏に連絡が取られ、なんとか演奏にもっていくよう了承を得た。
さて、以下、<日本交響楽振興財団奨励賞>の6作の作曲者名と作品名、そして<日本交響楽振興財団作曲賞入選作品>を列挙してみよう。
<日本交響楽振興財団奨励賞>
篠田昌伸(しのだまさのぶ):In the wrong direction for orchestra
渡辺俊哉(わたなべとしや):Devenir
池田悟(いけださとる):管弦楽のささげもの Orchestra Offering
中村寛(なかむらひろし):Klage der Ariadne―アリアドネのなげき―
小林寛明(こばやしひろあき):百億の昼と千億の夜
近藤春恵(こんどうはるえ):Aria―独奏尺八と弦楽オーケストラの為の
この<財団奨励賞>対象作品のうち、池田悟氏、中村寛氏、そして小林寛明氏の3作が<作曲賞入選作品>として、平成12年(2000年)7月7日(金)午後6時より、なかのZEROホールで催される<現代日本のオーケストラ音楽>第24回演奏会で、東京交響楽団、指揮秋山和慶氏の演奏で披露され、そのあとの第2次選考委員会で<作曲賞>としての審査がおこなわれる。
次に<奨励賞>作品の作曲者について、簡略ながら、紹介しておきたい。
篠田昌伸氏は昭和51年(1976年)11月生まれの23歳。東京芸術大学作曲科卒業後、同大学院(作曲専攻)に進学、さらに研鎖を積んでいる。尾高惇光、土田英介両氏に師事。