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当財団評議員であり、かつ作曲賞選考委員兼企画委員であられる作曲家別宮貞雄氏により、若手作曲家育成のために私財を寄付されるという嬉しい申し出があった。この申し出を受けて、企画委員会では、昨年、討議を重ね<日本交響楽振興財団奨励賞>なる賞を設定する案を作り、理事会、評議員会の承認、了承を得て、第22回作曲賞より発効することが決定された。

その内容は、第1次選考委員会で、入選作を選ぶ際に、原則として5曲をまず選び、その5作品にそれぞれ<日本交響楽振興財団奨励賞>を授与し、副賞としてそれぞれ20万円を贈るというものである。そして、その5作の中から、さらに原則として3曲を選抜し、これを入選作品とし、<現代日本のオーケストラ音楽>演奏会でこれらを演奏し、さらにその中から、このコンサートの目的の一つである<作曲賞>に該当する最優秀作品を1曲選び、副賞50万円を贈るというものである。ちなみに<日本財団賞>は80万円、そして<日本財団特別奨励賞>は20万円である。

こうして、作曲賞の世界でも、ようやく演奏部門のコンクールにおける褒賞金額に並びうるところまで辿り着いたことについて、日本財団に加えて、別宮貞雄氏に対しても、心からなる感謝の意を表明させて頂きたい。

 

さて、第22回作曲賞第1次選考経過と選評について報告を試みたい。

本年度の応募者数は、合計19名(うち再応募者は7名)であったが、これは第21回と比較すると9名の減少である。しかし、20名を越える応募があったのは全22回のうち、わずか6回であり、第15回から第17回と3年連続で20名を突破していた時期以外は、およそ5年目あたりに廻ってくる現象である。前回は28名と過去最大級であったが、今回の19名もけっして少ない数ではない。シンフォニックな作品に必要とされる時間、労力、その他際立って精神的な緊張といった要素を顧慮すれば、20名近い応募者数は、こうしたジャンルへのコミットメントの意思が、しだいに堅固なものとなってきていることの証左だと言うべきであろう。

学歴については、音楽大学関係が3分の2弱と圧倒的であり、しかも大学院ないしそれに準じる課程修了者、在学者がそのほとんどを占めていることを考えると、すでに前回も指摘したことであるが、メチエとしての作曲技法の修得が、なににもまして優先する傾向は、さらに一層顕著になりまさって来ているかに思われる。

こうした学歴と、そして年齢構成は関連性を示しているというべきだろう。10代(1名)、50代(2名)、60代(1名)という両端層は別として、20代(4名)、30代(9名)という年齢層か圧倒的で、しかも30代がとくに目立っているのは、多くの作曲学徒が、オーバードクター(オーバーマスター?)的な状況、条件の中にあることを示唆するものであろうか。

曲種についても、作曲者自身の捉え方、決め方の問題もあるが、ジャンルの混在もあって、古典的な分類は、むしろ無意味であろう。ただ、交響楽(シンフォニー)という語に関連づけられたものが2曲、交響詩と謳っているものが2曲、序曲と命名したものが1曲、協奏曲的なものが1曲といった注釈を加えることができる。

演奏時間も、8分から20分に及ぶが、10分台が15曲と圧倒的に多い。しかし、作曲者自身の作品時間と、演奏者、(指揮者)の演奏時間との間には、かなりの相違があり、その意味では信用できない。むしろ作曲者の作品時間は、楽譜上の音符のメトロノーム時間の意味であろう。

第1次選考委員会は、1999年11月26日(金)の午後2時から始められた。出席委員は、一柳慧、武田明倫、野田暉行、別宮貞雄、松村禎三、三善晃、それに座長の海老澤敏、書面審査参加は廣瀬量平、欠席者は岩淵龍太郎、高田三郎、間宮芳生、以上の諸氏であった。これに指揮者(<第24回現代日本のオーケストラ音楽>演奏会指揮者)秋山和慶氏か総譜をチェックされて、演奏上の問題点について、とりわけ演奏の難易について書面で意見を開陳されている評価も最終的に考慮の対象とすることが了承された。

 

 

 

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