■東京交響楽団
1946年に東宝交響楽団の名で創立。1951年東京交響楽団と改称して今日に至る。歴代の指揮者には、近衛秀麿、上田仁などがおり、1964年以来秋山和慶が音楽監督・常任指揮者を務めている。1991年大友直人が正指揮者に、1994年から飯森範親が指揮者に就任。
活動の特色の一つに邦人作品を含む現代音楽の初演があり、その功績により1949年第1回毎日音楽賞、1953年文部大臣賞を受賞している。1976年アメリカ、カナダ、メキシコ、1982年韓国、1986年中国にて公演を行う。1991年ヨーロッパとアメリカにおいてワールド・コンサート・ツアーを実施して大成功を収め、1993年タイ、シンガポール公演、1994年にはECジャパンフェストの招聘によりポルトガル公演をおこなった。現代作品への意欲的な取り組みと長年の業績が認められ、1990年音楽之友社賞、1993年京都音楽大賞を受賞。1994年秋山和慶の音楽監督就任30周年と第400回定期演奏会を記念して、シェーンベルク歌劇「モーゼとアロン」(邦人による日本初演)を上演して絶賛を博し、その成果に対し、1994年度毎日芸術賞、文化庁芸術作品賞が授与された。1996年楽団創立50周年を記念してヨーロッパ8都市で公演を行い、海外でもその演奏が絶賛された。1996年モービル音楽賞、1998年サントリー音楽賞を受賞。
1996年文化庁が日本の音楽界を牽引していると認めた団体に支援することを目的として設定した「アーツプラン21」に最初の団体のひとつとして選ばれ、その後3年間の活動を認められその第2期(1999〜2001年度)も選定された。
また、新潟市とは準フランチャイズ契約を結び、1999年4月から新潟市民芸術文化会館において定期演奏会や特別演奏会を開催し好評を博しているほか、フランス・オーヴィディス社とは録音契約を結び、シェーンベルク「ヤコブの梯子」、バルトーク「弦・打・チェレスタのための音楽」の2枚のCDをワールドリリースし、海外でも評価を高めている。
PROGRAM NOTES
■交響曲第5番ハ短調「運命」
(ベートーヴェン)
ベートーヴェン中期の代表作のひとつであり特に「運命」の俗称で親しまれている。この名称は、自称ベートーヴェンの私設秘書を名乗ったシントラーによって、「ベートーヴェン自身、この曲の第一楽章冒頭の動機をさして『運命はかく扉を叩く』と説明した」と伝えられた。
周到になされた全体の設計、テーマの綿密な発展・展開技法、がっしりとした音楽構造、簡素であるが故につきることのない可能性を秘めた旋律美などのなかに、この曲の音楽的美しさが根ざしている。(約35分)
楽器編成はフルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン2、トランペット2、ティンパニ、弦楽五部。
◆第一楽章 アレグロ・コン・ブリオ ハ短調2/4拍子。ソナタ形式。曲頭で奏される「タタタターン」の音型が、いわゆる運命のモティーフとして知られるものである。
第一楽章はこのモティーフの展開によって構成されていて、歌謡的な第二主題ですら、この基礎モティーフを旋律化することによってもたらされている。
◆第二楽章 アンダンテ・コン・モート 変イ長調 3/8拍子。前楽章から一転して歌謡的な主題による自由な変奏曲で書かれている。
◆第三楽章 アレグロ ハ短調 3/4拍子は第一楽章基礎モティーフを活用したスケルツォ。楽章の開始部で低弦が分散和音型の導入主題を歌い、それに他の楽器が応える形がとられているが、これは教会音楽で古来より用いられてきたレスポンソリウム(応唱)のスタイルを応用したものである。続くホルンの主唱、そしてそれに応える管弦楽の応唱という組み合わせもこれを適用したものである。