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池Bでは9月下旬まで安定して推移した。水路では11月中旬までほぼ一定の個体数を保った後減少し、12月上旬まで確認された。また湿地では9月下旬に現れ、10月中旬にピーク達し、その後緩やかに減少した。2000年には、4月中旬に池Aと水路で、5月下旬に水田と水路で成虫が捕獲され、6月中旬以降どの調査区でも見られなくなった。9月上旬に再び水路で個体数が増加し、9月中旬に最大になった。それと同時に池A、Bで個体数が増加し始め、9月下旬に最大になったが、池Bでは、10月上旬に、池Aでは11月中旬にほとんど確認されなくなった。池A、Bで個体数が減少した10月以降、湿地では個体数が安定していた。最長再捕獲間隔は1週と28週にピークがあり、最大48週であった(図2-4c)。本種は調査地内に長期間滞在する傾向があると考えられる。本種は田植え後の水田で繁殖を行なうとされているが(守山、1997)、本調査地では、水田のみでなく、湿地でも幼虫が確認されており、また、水路でも本種の卵塊が見られた。

 

2. 成虫の移動

1999年9月上旬にはじめて成虫の移動が確認され、10月に最も多く、12月上旬まで見られた(図2-4d)。また、2000年には、5月中旬から6月中旬の期間と、9月中旬から11月下旬に移動が確認された。

1999年には、8、9月は移動個体数が少なく、一定の傾向を見出すことはできなかった。10、11月には湿地、水路への移動と池Bからの移出が多かった(図2-4e)。2000年には、4月から9月の間に多くの個体の移動が確認され、特に滞水田以外の区の間での移動が多く認められた(図2-4f)。また、水田は、移入のみが確認された。落水後には、落水前と同様、特に滞水田以外の区の間での移動が多く認められ、水路、池Bからは個体が移出する傾向が、また、湿地に個体が移入する傾向があった(図2-4g)。

また、越冬個体が6月以降ほとんど確認されなかったことから、本種は繁殖後に死亡すると考えられる。また、冬季には湿地のみで個体が確認されたことと、落水後湿地へ移入する傾向があることから、本種は越冬に湿地を利用していたことがわかった。日比(1994)は、ガムシは羽化後ため池に移動して越冬するとしている。しかし、本調査では、ガムシ成虫は水田落水時期に一時的に池に多くの個体が移入したものの、それ以降多くの個体が湿地へ移動して越冬し、春になると水田や池に移動することがわかった。

 

 

 

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