第2節 タイコウチ
1. 季節消長
タイコウチの成虫は、調査地全域では、2000年6月中旬に現れ、8月上旬から9月下旬にかけて増加した(図2-2a)。その後、11月中旬まで減少し、冬季は10個体前後で推移した。調査区ごとに見ると、成虫は滞水田では6月中旬に、水田では7月上旬に現れ、一時的に見られなくなった後に、8月上旬に水田で増加した。成虫は8月中旬以降に水田で減少するのと同時に、湿地を除く残りの区では増加し、9月下旬にピークを示した後に減少した。冬季には、成虫は水路と湿地で確認された(図2-2b)。最長再捕獲間隔は22、23週にピークがあることから、本種は調査地内に長く滞在する傾向があると考えられる(図2-2c)。
2. 移動
タイコウチ成虫の移動は、2000年8月下旬から11月下旬の期間に見られ、特に9、10月に多く確認された(図2-2d)。水田の入水から落水までの期間の移動は、主に水田からの移出と、池Bへの移入であった(図2-2e)。落水後には、水田を除く各調査区間で成虫の移動が見られた(図2-2f)。ミズカマキリやタイコウチなどは、羽化後、成虫が池に戻って越冬するとされているが(守山、1997)、本調査地では、落水後に特定の環境に向かう傾向は見出せなかった。
第3節 ヒメゲンゴロウ
1. 季節消長
ヒメゲンゴロウの成虫は、1999年には9月上旬に現れ、11月下旬まで増加し、12月9日に行った1999年の最後の調査でも100個体以上が確認された(図2-3a)。2000年には、4月から5月上旬にかけて、越冬個体が全調査区で約50個体が継続して確認されたが、5月中旬から減少し、7月下旬にはほとんど見られなくなった。8月上旬から新成虫と思われる個体が増加し始め、10月中旬にピークに達したのち減少し、12月以降ほとんど見られなくなった。本調査地では、ヒメゲンゴロウは池を造成した1999年には多くの個体が見られたが、2000年には前年と比べ、個体数が1/3以下に減少した。このことは、八木(1996)の、ヒメゲンゴロウは遷移の初期段階に現れる種であるとする仮説と照らして興味深い。
調査区別に見ると、1999年には9月上旬以降、池A、水路、湿地で多くの個体が捕獲された(図2-3b)。