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結果および考察

第1節 ミズカマキリ

1. 季節消長

ミズカマキリの成虫は、調査地全体でみると、1999年には、7月上旬から増加し始め、9月中旬に個体数が最大になった後、10月中旬まで減少し、その後12月中旬まで約60個体でほぼ一定数を保った(図2-1a)。2000年には、越冬成虫が5月中旬に見られなくなり、新成虫と考えられる個体が7月上旬から増加し始め、8月中旬に個体数が最大になった後、9月上旬から11月上旬まで約30個体でほぼ一定数を保ち、以降ほとんど確認されなくなった。

各区ごとに見ると、1999年には、池A、B、水路で7月中旬に成虫の個体数が増加し始め、池B、水路では9月上旬に、池Aでは10月に最大となった(図2-1b)。落水後、池B、水路では個体数が大きく減少したが、池Aでは約50個体でほぼ一定数を保った。2000年には、池A、水路で見られた越冬成虫が5月中旬に見られなくなった。7月中旬から新成虫と考えられる個体が増加し始め、水路では8月中旬に、池Aでは9月中旬に個体数が最大になった。落水後には、成虫は池Aのみで確認され、10月上旬まで約20個体でほぼ一定数を保ったのち減少し、その後ほとんど確認されなくなった。ミズカマキリはため池で越冬するとされているが(日比、1994)、本調査地では、他の調査区と比べて比較的水深の深い池Aが越冬場所として利用されていた。成虫の寿命や調査地における滞在期間を表すと考えられる、最長再捕獲間隔は、90%の個体が15週間までに含まれており、最長で1999年9月9日から2000年9月13日の53週であった(図2-1c)。日比(1994)は、ミズカマキリ成虫は繁殖後死亡するとしているが、本調査では少ないながらも1999年に標識を行なった個体が2000年9月に再捕獲されていることから、繁殖後も生存する個体がいることが分かった。

 

2. 成虫の移動

ミズカマキリ成虫の移動は、1999年には、8月上旬にはじめて確認され、徐々に増加して10月中旬に最大となり、11月下旬まで確認された(図2-1d)。また、2000年には、8月上旬から10月中旬まで成虫の移動が見られた。1999年の調査期間を通じて見ると、池A、B、水路の3区の間での移動が全体の98%を占めた。また、落水前後の総移動個体数はほぼ等しく、8、9月には池Bと水路に向かう個体が全体の約80%を占め、その中でも特に池Bと水路間の相互の移動が多かった。10、11月には池Aへの移動が約80%を占めた(図2-1e)。2000年の水田の入水から落水までの期間における成虫の移動は、池A、B、水路、水田の間のみで見られ、特に池A、水路間の移動が多かった。落水後は、池B、水路から池Aへの移動のみが確認された。(図2-1f、g)。

 

 

 

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