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第2章

稲作水系における水生昆虫の生活場所利用および移動

石井実・向井康夫・馬場直人

(大阪府立大学大学院農学生命科学研究科応用昆虫学研究室)

本章では、水田や水路、湿地などを含む稲作水系において、水生昆虫の季節的な生活場所利用や移動、分散について調査を行なった。

 

調査地と調査方法

1. 調査地

1999年4月下旬から5月上旬に、大阪府豊能郡能勢町長谷の標高約350mの山間部にある棚田群上部の放棄水田を利用して浅い2つの池(それぞれ約50m2、約30m2以下池A、B)および水路(以下水路A)を造成した。池Aは、鍬や鋤、ショベルを用いて30cm程度掘り下げ、その残土を利用して畦を整えた。また、池の法面は直径5〜10cm程の丸太と杭を用いて補強を行った。池Bは池Aと同様の方法で造成したが、池Aのように法面の補強はしなかった。本研究ではこれらの池A、Bおよび水路A、その周辺の湿地と3本の水路(水路B、C、D)を調査区として設定した。2000年には、4月下旬に新たに池Bと同様の方法で造成した面積約25m2の池Cと、水路Dと繋がる水田を調査区に加えた。

池Aは、期間を通じて水深約20cmに保ち、ため池の環境とした。池Bは水深を9月下旬まで約15cmに保ったが、1999年は9月29日に、2000年には9月24日に周辺の水田の水管理を模して落水を行った。落水後の水深は約1cmとなった。造成した池の一段上の面積約40m2、水深5〜15cmの放棄水田を湿地として調査対象とした。また、水路Aは湿地から池に水を導入するために造成したもので、長さ約9m、幅約30cm、水深は5〜15cmの間で変動があった。水路Bは池の一段下の休耕田に以前からあった水路で長さ約27m、幅約30cm、水深5〜10cmであった。

 

 

 

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