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(2) 活動の季節

かつて、里山での管理作業は、主に晩秋から早春の頃までの冬季に行われました。それは、ちょうどこの時期が農閑期のため、人手を農作業から里山での管理作業や炭焼き、薪割りに、振り分けることができたからです。また、冬季は木々幹や枝の組織が十分に栄養分を蓄え、堅く締まっているので、この時期に伐採や間伐、芝刈りをすると、材質の良いものが得られるのです。さらに、冬季は病原菌や害虫の休眠期であることから、切り株や、枝の切り口からこれらが侵入して、枯らしたり、新芽の萌芽を阻害したりするのも防止できます。そうして春が来れば、切り株から勢いの良い新芽が伸びてきます。

一方、アカマツの実生や、切り株から伸びてきた萌芽枝の成長のためには、旺盛に繁茂してくる夏草を刈り取る必要があります。また、このような夏草は有機肥料として田植え前の田んぼに鋤こんだり、野菜畑の敷き草などにも必要でした。

以上のように里山管理の時期は、労働力、収穫物の材質、生物界の活動、管理の必要と利用の目的などが実にうまく組み合わさって行われていたのです。

市民参加で里山の管理を進める場合にも、これらのことを十分に考慮して活動の時期を決める必要があります。しかし、参加する市民のほとんどは、農業をしているわけではありません。収穫物は有機農家に提供したり、また今後は自然資源がいっそう見直されて、利用の道はいくらでも開けると思うのですが、人手の点では市民が参加しやすい時期を選ぶことも大切です。

 

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コーヒーブレイクは里山作業の楽しみのひとつ

 

 

 

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